キリンジ
ヴァラエティーを増したサウンドが、より〈らしさ〉を明確にした傑作!
キリンジによる3年ぶりのニュー・アルバム『DODECAGON』は、先行シングル“ロマンティック街道”でも聴かせていた大胆な打ち込みサウンドの導入が大きな特徴となっているわけだけど、それと共に一聴した印象、いままでにも増して世の中の気分やらニーズといったものに接近した印象を与えてくれるアルバムなのである。
「前作は中音域を強調した70年代後半的な音像だったんですけど、今回は上から下までキレイに出てるような……まあ、言ってみればいまもっともポピュラーな音楽の耳触りに近くなっていて」(堀込高樹、ギター/ヴォーカル)。
「今回はセルフ・プロデュースっていうこともあって、完成させていくまでに〈ああじゃないこうじゃない〉って言いながら正解を探していく作り方をしたんですね、意識的に。その結果、そういう音像にしようという発想が可能になったと思うし、打ち込みの要素も増えたんです」(堀込泰行、ヴォーカル/ギター)。
「とはいっても、すべてエレクトロっぽいとかひとつの傾向に突っ走るのは性分としてできないというか。ソングライティングを中心に響かせるためのサウンドを模索したアルバムだったから、結果的にはヴァラエティー豊かになりました。このヴァラエティー感っていうのもイイんじゃないかな(ニヤリ)」(高樹)。
「クロスオーヴァー具合っていうのが明確に打ち出せたアルバムじゃないですかね。以前は生演奏を主体にして微妙な混ざり具合っていうのを楽しみながら作っていたところもあるけど、いまはゴロゴロっとしたデカい具の入ったカレーみたいな(笑)、要素がわかりやすいものになってる」(泰行)。
「単純に言うと〈いま寄り〉の音にしたことによって、キリンジっていうグループのソングライティングの傾向とか個性みたいなものが、却ってハッキリわかるものになったかな」(高樹)。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2006年11月16日 22:00
更新: 2006年12月07日 22:47
ソース: 『bounce』 281号(2006/10/25)
文/久保田 泰平