インタビュー

タラチネ

日常的で普遍的なポップ・サウンドを奏でる若き才能たちが、待望のアルバムをリリース!


 ファースト・フル・アルバムとなる今作『世界の歌』のタイトルに集約されているとおり、タラチネがなによりも大事にしているのは、歌でありメロディーだ。柔らかさの奥に芯の強さを感じさせる桑原沖広のソウルフルなヴォーカルと、少女性を残した岸真由子のイノセントな歌声。この男女2人から発せられるメロディーを、ギター、ピアノ、メロディオン、管楽器、環境音、声のループ……といったさまざまな音が押し上げ、ストーリーを紡いでいく。

「自分は先鋭的なものを求めているわけではないんです。ヴォーカリストに合ったテンポの曲をきちんと書いて、きちんと歌いたい。アレンジでは、メンバーみんなでアイデアを出していじり倒していますけど(笑)。ダメだったら歌に戻ればいいんだから」(桑原沖広、ヴォーカル/ギター)。

「(桑原の作る)メロディーが強力なので、楽器隊が自制しながらアレンジをする必要はないんです。収拾を付けようとしなくてもいい」(永田大、ベース/メロディオン/サンプラー)。

〈日常の美をポップスで表現すること〉をコンセプトとして結成されたタラチネの音楽には、送り手と受け手の両方が構えることなく関係を結べるだけの人懐っこさがある。それは、タワレコ限定でリリースされたミニ・アルバム『桃源郷』に引き続き、本作でもプロデュースを務めたクラムボンのmitoによる〈彼らのスタートラインが私たちのそれととても近いように感じる〉というコメントにも表れているように思う。

「mitoさんはテクニカルな部分ももちろんバッチリなんだけど、なにより朗らかで、人としての魅力が大きい。タラチネのユルさを認めてくれたから、アルバムに大らかな感じが出せたんだと思う」(桑原)。

「なにかを教えるんじゃなくて、話しながらいっしょに考えてくれた。そんななかで、音をストイックに配置することよりも、その場の雰囲気をパッケージングすることのほうが大事だっていうことを気付かせてもらったりして。音楽に対する意識が変わりました」(永田)。

 タラチネの音楽が、日常のサウンドトラックとして多くの人々に浸透していく……彼らの歌には、そんなことを想像させる力がある。

「僕にとって音楽は芸術じゃなくて人と繋がる手段なんです。どうやったらライヴで盛り上がるのか、桑原の歌をどれだけカッコ良く聴かせるかということしか考えていない。やりたいことと人と繋がることはイコールだから」(永田)。

▼タラチネの過去作を紹介

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年11月22日 22:00

更新: 2006年11月22日 22:38

ソース: 『bounce』 281号(2006/10/25)

文/ヤング係長