THE SUNSHINE UNDERGROUND
「リーズの音楽シーンはいま物凄く盛り上がってるよ。市内にあるクラブやライヴハウスでは毎晩地元のアーティストが代わる代わるギグを行っているんだ」(マシュー・グウィルト:以下同)。
イングランドのほぼ中央に位置する国内有数の商業都市=リーズは、ミュージックやフォワード・ロシア、ロジャーなど数々の個性的かつ良質なバンドを生み出した〈インディー・ロックの都〉として、現在グラスゴーやマンチェスターに匹敵するほどの隆盛を見せている。そんな街から彗星の如くシーンに現れ、デビュー・アルバム『Raise The Alarm』で一気にブレイクしたサンシャイン・アンダーグラウンドが日本デビューを果たした。まずは明るいんだか暗いんだかよくわからない不思議なバンド名について語ってもらおう。
「このバンド名は僕らにピッタリだと思うんだけど、響きが良かったから付けただけで特別な理由はないんだ。由来としてはケミカル・ブラザーズの曲のタイトルを拝借したんだよ。メンバー全員彼らの大ファンだからね。その曲は〈ランチタイムに職場を抜け出してクラブで騒ぎまくる〉って内容でさ、僕らはさすがにそこまでしないけど、反体制的な心意気が気に入ったんだ」。
いまや〈ダンス・ミュージックとロックのクロスオーヴァー〉なんてあたりまえすぎて、斬新でも何でもない。多くのバンドが他のバンドとの差別化に苦しんでいる飽和状態のなか、しかし彼らは果敢にも〈踊れるロック〉に挑み、なおかつ熱狂的な支持を得ているのだ。
「僕たちもご多聞に漏れずインディー・ディスコが好きなんだ。でも、それと同時に素晴らしい曲を書きたいっていう情熱も持ち合わせてる。だから結果として、ライヴやクラブはもちろん、自宅のステレオでも十分に楽しめるアルバムに仕上がっているんじゃないかな」。
ラプチャーやトーキング・ヘッズ直系のNY的なディスコ・パンクのビートと、ニュー・オーダーやストーン・ローゼズあたりを彷佛とさせる絶妙なグルーヴ感、そして作品全体を覆うUK特有のポップネス全開でキャッチーなメロディー――自分たちが影響を受けてきた音楽への愛情をストレートに表現し、気取らずにありのままを鳴らしたからこそ、彼らのサウンドは聴く者のハートをダイレクトに刺激するのだ。そう、キーワードは〈いかに自然体か〉ということ!
「〈こういうサウンドにしよう〉って話し合ったりはしないんだ。自分たちにとって自然でありのままの音楽を作ってきただけだからね。僕らがいままで聴いてきた音楽が融合されて、このバンドのサウンドになってるんだよ。メンバー全員がNYサウンド、特にLCDサウンドシステムの大ファンなんだ。でも生まれ育ったUKという環境もあって、もちろんブラーやストーン・ローゼズといったブリット・ポップも好きなんだよね」。
バンドとしてのコンセプトを「自分たちが満足できる音楽を作る、ただそれだけ!」と単純明快に語ってくれたが、これは容易なようで実はかなり難しいことである。しかし『Raise The Alarm』と名付けられた今作で、彼らはそれを堂々とやってのけたのだ。
「誇りに思えるアルバムだよ。期待以上の素晴らしい作品に仕上がったと思うからね。このタイトルは、みんなに〈心の準備はいいか?〉ってちょっとした警告のつもりで付けたんだ。つまり、〈サンシャイン・アンダーグラウンドの登場だ! 気をつけろ!〉みたいな感じ。同時に、いまやっていることを中止して他のことにも目を向けてほしいっていう気持ちも込められてる」。
心配無用。すでに全世界の音楽ファンが手を止めて、足を止めて彼らの音楽に注意を払っているのだから。そしてあなたもいまやっていることをすぐに中止して、超自然体の耳でもって彼らのビートとグルーヴを体感するべきだ!
PROFILE
サンシャイン・アンダーグラウンド
クレイグ・ウェリントン(ヴォーカル/ギター)、スチュアート・ジョーンズ(ギター)、デイリー・スミス(ベース)、マシュー・グウィルト(ドラムス)から成る4人組。2000年頃にUKはリーズ近郊の田舎町で母体となるバンドを結成。高校に通いながらライヴ活動を開始する。卒業後、メンバー全員でリーズに移住。その際にケミカル・ブラザーズの曲名からバンド名を取り、マシューを新メンバーに迎えることで現在の編成となる。今年に入って5月にシティ・ロッカーズからファースト・シングル“I Ain't Losing Any Sleep”でデビュー。8月にファースト・アルバム『Raise The Alarm』(City Rockers/Red Ink/ソニー)を発表。このたびその日本盤がリリースされたばかり。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2006年11月30日 14:00
更新: 2006年12月14日 22:08
ソース: 『bounce』 282号(2006/11/25)
文/白神 篤史