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インタビュー

Base Ball Bear

痛快無比なギター・サウンドが貫く新作が登場! ホットで直情的な一面とクールでトリッキーな一面を併せ持った音世界の秘密に迫る!!


  ハートにズキュンとくる、痛快メロディックなギター・ロック――そんなふうに紹介できれば、いっそ楽なんだけど。だけどBase Ball Bearは、そしてソングライターの小出祐介は、そんな安易な表現を許してはくれないんだ。

「音楽を聴くときに、グルーヴだとかフィーリングだとか、このサウンドは気持ち良いとか、そういうのがあんまりなくて。理屈っぽく聴いてるんですよ。〈このコードがこう動いて、ここでちょっと外すのね〉とか。あんまり、聴くことに楽しみはないです。作ってる本人がおもしろがってるのがわかるような音楽が好きなんです」(小出祐介、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 84年生まれなのに、フェイヴァリットに〈ニューウェイヴ系一連〉と書いてしまう小出らしい意見。その、一筋縄ではいかないセンスを突き詰めて完成した、メジャーでは初となるフル・アルバムが『C』である。

 「やり切った感はありますね。メロディーはこれ以上妥協できないし、音はこれ以上減らせない。ギター・ロックという形ではこれがギリギリなのかなぁという感じと、やりたいことをやってるトリッキーなおもしろさとが、いいバランスでまとまってると思います」。

 もちろん〈痛快メロディックなギター・ロック〉として聴いてもらっても全然OK。歌詞もほぼ全曲が〈夏〉〈海〉〈女の子〉〈恋〉で埋め尽くされているし……。でも、なんか変なんだよな。この奇妙にねじれた聴後感は。

「歌詞は実体験ではなくて、自分のなかの理想の設定とかそういう感じ。〈こういう恋愛がしたい〉的なね。それが歌うモチベーション、っていうのも現代っ子ですけど(笑)。テーマは、最終的には〈君が好き〉とか、それぐらいしかないんですよ。メッセージじゃないですから。誰かを救おうとも思ってないし、救われたって言われても〈ああ……ありがとう〉ってなっちゃうし(笑)。おもしろがってほしいんです。曲調も歌の内容も」。

 そんなクールなことを言いつつ、ライヴでは思い余って絶叫しながら歌ったりするのが彼のおもしろいところ。Base Ball Bear、彼らはホントにおもしろいバンドなので、ちょっと聴いてみてくれませんか?

「新しいものって、もうないと思うんですよ。(本誌前号の表紙を指しつつ)この、コーネリアス以外は(笑)。切って貼って、っていうぐらいしかない。そうじゃなければ、何かしらの流れを汲みつつやるしかない。でも新しい感覚や、やり方はいくらでもあると思うので、そのなかでいちばんおもしろいと思えるものをやりたい。やりたいことをやって、巻き込んだもん勝ちだなと思っているので」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年12月07日 20:00

更新: 2006年12月07日 21:29

ソース: 『bounce』 282号(2006/11/25)

文/宮本 英夫