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インタビュー

RATATAT

人懐っこいけどちょっぴり不思議な名前を持つインスト・ポップ・ユニットの正体を暴け!


 NYに住む若いアーティストならではの、何でもアリなヴェンチャー気質を持った革新的なポップス──それがマイク・スタラウド(ギター)とエヴァン・マスト(キーボード)の2人から成るラタタットの音楽だ。2001年に結成し、2004年にはファースト・アルバム『Ratatat』をリリース。同作はインディー・ロック好きの間で密かな話題となっていた……が、その素性は謎に包まれたままだった。しかし、セカンド・アルバム『Classics』にてこのたび日本デビューを果たすにあたり、美しくも珍妙なノスタルジック・マキシマル・サウンドのルーツをメンバーに直撃することができた。

「12歳の時にギターを始めたんだ。高校で4トラック・レコーダーを買って、カセットテープのアルバムを何本も作った。で、大学でエレクトロニックな音楽を作り始めて、その直後にラタタットを結成した感じだね。初めて買ったカセットはDJジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンスの『He's The DJ, I'm The Rapper』で、LPだとミート・パペッツの『Up On The Sun』。そしてCDは確かレッチリだったような……」(エヴァン:以下同)。

 彼らのビートには既存のロックに存在しないフォーマットが用いられているが、そのルーツはヒップホップだったようで、「特にティンバランドのプロダクションは尊敬しているよ」とのこと。しかし一方で、もっとも影響を受けたアーティストを尋ねると、「キンクス!」との答えが。それはなぜ?

「キンクスのポップ・ミュージックに対するアプローチはとてもユニークなんだ。作曲がめちゃくちゃヘンなのに、それがスムーズに流れるもんだから、いかにヘンかということに気付きにくいんだけどね」。

 確かに、ラタタットにもその〈ヘン〉な精神はバッチリと受け継がれている。話は変わるが、今作のレコーディング時に彼らのファンだと公言するビョークが、自宅にある自身のスタジオを貸し与えたという逸話を小耳に挿んだんだけど……ホント?

「そうそう! 2年前に彼女のスタジオでレコーディングしたよ。最高の環境だった! 森の中にあって、しかも近くには川が流れている。リラックスできたし、すごくインスピレーションを受けたね」。

 エレクトロニクスを前面に打ち出したインスト曲ながら、そこに有機的な温もりや懐かしさを感じさせるのは、そんなレコーディング環境が音に溶け込んでいるからなのだろう。

 本誌が発行される頃には、モグワイとの来日ツアーも果たしている彼ら。日本でのブレイクもどうやら時間の問題である。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年12月07日 22:00

ソース: 『bounce』 282号(2006/11/25)

文/冨田 明宏