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インタビュー

Copeland

美しいメロディーでキッズの涙腺を緩ませる彼らが、日常をシニカルに表現したコンセプチュアルな新作を投下した!


  通算3枚目のニュー・アルバム『Eat, Sleep, Repeat』をリリースしたばかりのコープランド。すでに2度の来日を果たし、派手なプロモーション展開ではなく、バンドの魅力が口コミで広がることによって着実にエモ・シーンでファン・ベースを拡大しているのは、日本でも本国USでも変わらない。シンプルなアルバム・タイトルからは、日々の生活の中で繰り返される単調なルーティンを想起させられるが、それらは私たちのような一般市民だけのものでなく、世界中をツアーで旅する彼らだって同じことを感じているようだ。

「毎日起きて、食べて、寝て、次の街へ行く。たくさんの人に出会えるけど深く知り合うほどの時間がなかったり、2度と会えない人もいる。たくさんの街を訪れても、その街を理解する間もなく次の街に連れて行かれる。その繰り返しだよ」(アーロン・マーシュ、ヴォーカル:以下同)。

 今作の歌詞やアートワークが、いままでのような瑞々しさ、清々しさよりもダークな色合いを増しているのは、ここ数年間の生活環境の変化によるところが大きい。

 「アートワークに登場しているキャラクターは〈家族〉という人間関係とも解釈できるけど、それ以外の人間関係と結びつけてみることもできる」。

 普段の生活から離れて、家族や友達との人間関係から距離を置く時間が長くなった結果、寂しさを感じることもあるのだそう。そんなダークなエモーションがこのアルバムには感じられる。

 音源が到着する前は〈実験的な側面が強く、レディオヘッド的なアプローチもある〉と噂されていたが、実際に聴いてみると最近よくあるレディオヘッドやミューズに感化されたサウンドではない。どちらかといえばビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』の現代版と表現したいような、美しいメロディーの中にそれぞれの楽器の個性的な鳴りが光っていて、聴くごとに新たな発見に出会える一枚だ。もちろんクリエイティヴィティーに溢れ、ディテールにこだわった音作りも素晴らしいのだが、アーロンやゲスト・ヴォーカルのレイチェルが織り成すハーモニー、そして声そのものの持つ美しさや表現力といった彼ら本来の魅力である〈歌〉に重きが置かれているのが何より印象的。そろそろ出尽くした感もあるUSエモ・シーンの中で、〈エモ〉という感性を残したまま新しいアプローチを試みた『Eat, Sleep, Repeat』は、彼らの未来に期待を寄せたくなる、そんなアルバムだと思う。
▼コープランドの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年12月14日 21:00

更新: 2006年12月14日 21:42

ソース: 『bounce』 282号(2006/11/25)

文/栗原 泉