インタビュー

Jazztronik

2007年の幕開けを飾る新作は、ジャズやハウスやロックまで採り込んだ、ダンサブルかつハイパー・ポップな大傑作だ!!


 「今回は素直に作れたかな。良い意味でポップだし」――今井美樹からマルコス・ヴァーリまでが同居し、振り幅の広い楽曲たちをこれでもかと詰め込んだ濃密な連作『CANNIBAL ROCK』と『en:Code』は、まるで〈Jazztronikという器で何ができるのか?〉という野崎良太自身による自問自答の場のような趣きがあった。それに対して、ミニ・アルバムと自身の初CD化音源も収録したミックスCDの2枚から成る〈プロジェクト・アルバム〉という形で2007年の幕開けを告げる『Love Tribe』は、そんな試行錯誤を経た彼が改めて〈外〉を向いたかのような、風通しの良い作品に仕上がっている。

「〈JAZZTRONICA!!〉(野崎が主催するイヴェント)をやっていて、良い意味でキャッチーでカッコ良い曲をプレイし、作るということが不足しているかも、ということをここ1年ですごく感じて。あと、自分がクラブに通いはじめたときに好きだった曲をかけると若い子たちがすごく反応する、っていうことも現場で見てきたのね。それで、(制作中は)テイ・トウワさんの曲とかをよく聴いたんだけど、そうするうちに、自分にとってのテイさんやU.F.O.みたいに、Jazztronikが普段クラブに来ない人をクラブに来させる入り口になるといいな、と思うようになったんです」。

  表題曲ではMiss Vehna from Soul Trip!!のソウルフルな歌声と、ユニゾンを多用した重層的なストリングスも多幸感たっぷりな日本語詞のヴォーカル・ハウスを聴かせ、いまやライヴの定番となった“TIGER EYES”はMONDAY満ちるを起用した英語詞ヴァージョンでジャジーに再構築。また、電子音を配したクリック・ハウス風の導入から、野崎によるピアノが重なってメロディアスに展開していく“Life Syncopation”などのインスト曲から、アッパーなボッサ・チューン“Festalica!!(Clap Ya Hands)”、さらに「ミドル・テンポのDJセットで(ローリング・)ストーンズを交ぜたりするんだけど、そういう流れでかけられる自分の曲があったらいいな、と思って」と自身も語る、cro-magnonとロブ・ギャラガーを迎えたグルーヴィーでロッキンな“Dust To Dust”まで収録した本作。音楽性は雑多でも全編に統一したトーンが感じられるのは、野崎の〈プロデューサー目線〉がなせる業だろう。

「トラックではコアなこともやりつつ、その上でどれだけポップに仕上げられるか、っていうのが今後のテーマですね。ラスマス・フェイバーや、いまのUSポップス界みたいに、日本でも器用なプロデューサーが増えてくれるといいな」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年01月25日 23:00

ソース: 『bounce』 283号(2006/12/25)

文/牛島 絢也