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インタビュー

THE KBC


 キラーズ以降、ディスコ・ビートと煌びやかなシンセサイザーを身に纏った多くのダンス・ロック・バンドが浮かんでは消えていくなか、強力な新人が現れた。唯一無二のメロディーとシンプルなギター・サウンド、そして繊細なビートの美しすぎる調和がここ日本でも早耳UKロック・ファンから絶大な支持を受けて、先行で発表されたミニ・アルバム『Boxed Beats And Shelved Rhythms』が好セールスを記録しているプレストン出身の3人組、KBCがファースト・フル・アルバム『On The Beat!』をリリースする。フロントマンのジミー・マルホーランド(発言:以下同)がちょっぴり知的なバンド名の由来を語ってくれた。

「KBCは〈Killer Beans of Calabar(カラバール地方に伝わる死の豆)〉の略。古代西アフリカの伝説によれば、罪深い人間はこの豆を食べるとその毒に耐えられずに死んでしまう。逆に、無実の人間は生き延びるらしいんだよ。3年前に〈New Scientist Magazine〉でこの豆に関する記事を読んでおもしろいなって思ったから、バンド名に使うことにしたんだ」。

 結成から半年も経たないうちに同郷のオーディナリー・ボーイズの前座に抜擢されて、インディー・レーベルのハイ・ヴォルテージと契約。さらに、あのストロークスのメンバーを虜にし、彼らと共演を果たすなど破竹の勢いで次世代バンドの頂点へと昇り詰めたKBC。そんな彼らのサウンドには、さまざま音楽のフレイヴァーが見事なアクセントとなってチラリと姿を現す。

「リスペクトしているミュージシャンは、ソングライターとしてのコーラルとビートルズ、それから70年代のソウル/ファンク勢かな。クラブ系だと、ダフト・パンクやLCDサウンドシステムなんかも好きだね。いま挙げたアーティストには共感が持てるよ。それに、俺たちがいろんな要素を融合した音楽を作ろうとしていることをわかってもらえるんじゃないかな?」。

 他のディスコ・パンク・バンドに比べるとKBCはシンセサイザーにあまり頼ることはなく、シンプルなギター・ロックを奏でているのだが、しかしながら随所でエレクトロニックな要素を主張してくるあたりが興味深い。彼らの音楽にはプライマル・スクリーム的な佇まいと、メンバー全員がファンだというプロデューサーのトム・ヴェックからの影響を感じることができる。

「俺たちは3人しかいないし、ライヴでプレイできる楽器には限界があるんだ。だけど、スタジオではいろんな楽器を加えていくことが可能だし、自分たちの曲に煌めきを与えるためには、それが必要だと思ってるんだ。煌めきだよ、煌めき!」。

〈煌めき〉――彼らの音楽を表現するのに、もっとも適した言葉である。この〈煌めき〉をもたらすのは、煌びやかではあるが決して過剰な装飾に頼らないサウンドとビート、そしてミュージックやニュー・オーダーにも通じるグルーヴであることは間違いない。究極のダンス・ロック・サウンドの結集はこうして10年に一度のロック・アンセム“Not Anymore”を生み出したのだ!

「ファンキーで誰もが踊れる要素を組み込みたかったんだ。俺たちはストーン・ローゼズやミュージックの大ファンなんだけど、KBCは彼らとは違ったタイプのバンドだと思う。それでも根底にあるものは共通しているんだよ。目や耳だけでなく、音楽を身体で感じてほしいんだ」。

 そんな『On The Beat!』をズバリ一言で「ファンタスティック!」と表現してくれた彼らが、同作を引っ提げて2007年1月に来日公演を敢行する。2005年の〈グラストンベリー〉に出演し、当時まったく知名度のない状況だったにもかかわらずオーディエンスを泥まみれになるまで踊り狂わせたという伝説を、目で、耳で、身体で確かめよう。そこにはきっと最高の〈煌めき〉があるはずだから!

PROFILE

KBC
ジミー・マルホーランド(ヴォーカル/ギター/キーボード)、リコ・オーメロッド(ベース)、マイケル・ブラウン(ドラムス)から成る3人組。2003年にUKはプレストンで結成。マンチェスターのインディー・レーベル、ハイ・ヴォルテージと契約を結び、2005年3月にシングル“Trippin”でデビュー。同年6月には野外フェス〈グラストンベリー〉に出演。その後も“Pride Before The Fall”などコンスタントにシングルを発表し続け、2006年8月にミニ・アルバム『Boxed Beats And Shelved Rhythms』で日本デビューを果たす。同作がロング・ヒットを記録するなか、このたびファースト・フル・アルバム『On The Beat!』(Hight Voltage/FABTONE)を2007年1月10日にリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年02月15日 23:00

ソース: 『bounce』 283号(2006/12/25)

文/白神 篤史