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インタビュー

Tyrese

シンガー、アクター、そして……新たな別人格が生み出した両刀使いの2枚組を堪能せよ!!


 「俺のR&Bアルバムを聴いて、まさか俺がライムできるとは思わないだろうし、その逆もありえるだろうね。ただ、俺を知ってもらうにあたって、R&Bのほうから入ってもらいたくないんだ。もちろんそれは俺の一部でもあるし、好きだから歌ってるわけだけど、俺の胸中をさらけだすことができたヒップホップ・アルバムでこそ、本当の俺を知ってもらえると思うんだ」。

 いや、アナタはすでに認知のあるシンガーなんだから、そんなことわざわざ言わなくても……と思っても、自信に満ち溢れたタイリースにそんな心配は無用だ。30秒のTVCMをきっかけに見い出され、モデルとして、同時にシンガーとしての飛躍を掴んだタイリース。情熱的な歌声を披露したデビュー・アルバム『Tyrese』(98年)はいきなりミリオン・ヒット。カッコ良すぎるルックスでモデルとしても大成し、俳優への転身も成功。いまや映画のプロデュースやマルチメディア企業の運営も手掛けるというビジネスの才にまで恵まれた……本当にマルチな男である。そんな彼のニュー・アルバム『Alter Ego』は、冒頭の発言どおり、タイリースの4作目と、その別人格=ブラック・タイなるMCのデビュー作をセットにした2枚組アルバムとなった。

「R&B部分は女性向けだね。ヒップホップのほうは〈男の中の男〉のためのアルバムなんだ。男の中の男なら共感できると思うよ」。
アンダードッグズやブライアン・マイケル・コックス、R・ケリー、リル・ジョンらが関わったR&B盤はそれだけでも十分リスナーにアピールできる素晴らしい仕上がりだ。ただ、当のタイリースは“Ghetto Dayz”など数曲で共演したコラプトについて、「彼が俺の才能を信じてくれたことに、MCとしてもっとも自信を感じたんだ」と無邪気に喜び、「ヒップホップ盤はR&Bのより5か月前に終わった。1日に4~5曲いっぺんに作り上げる〈2パック・スケジュール〉にしたんだ」とも語るなど、すっかりブラック・タイ・モードのご様子。他にも映画「Baby Boy」で共演済みのスヌープ・ドッグをはじめ、ゲームやトゥー・ショートらの助力も得た内容は、流石に自信たっぷりになるだけのことはある。そんな彼だからして、「俺自身が俺のモチヴェーションさ。タイリースに毎日刺激されているんだ」なんてナルシスティックな発言も……よく似合うのよね。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年02月15日 23:00

ソース: 『bounce』 283号(2006/12/25)

文/出嶌 孝次