インタビュー

ミドリカワ書房

ディープな話題もエンターテインしてしまう会心作!!


  整形手術を受けた女性の葛藤を描いた“心”、オレオレ詐欺に手を染めた若者を主人公にした“上京十年目、神にすがる”、そして刑の執行が迫った死刑囚が生まれて初めて母親に手紙を書く“母さん”。「小説は読むけど、音楽はほとんど聴かない」と言い切るシンガー・ソングライター、ミドリカワ書房によるニュー・アルバム『みんなのうた 2』は、現代日本の暗部に目を向けながら作り出した楽曲を質の高いエンターテイメントとして昇華させた、極めて独創的な一枚となった。

「作品のテーマはTVや新聞などから見聞きしたもの、スタッフやファンの方から提案していただいたものが中心で、自分の体験はほとんど入ってませんね。何かをメッセージしたり、感情を表現するなんて、おこがましい。あくまで私は、娯楽として皆に愛される歌を書きたいと思ってるので。ただ、今回はちょっと重い内容になったかもしれませんね」。

 楽曲の導入として制作されたショート・ドラマには劇団ひとりをフィーチャー。また、美しいメロディーとクラシカルなアレンジがひとつになったバラード・ナンバー“恍惚の人”、軽やかなフォーク・ロック・テイストを湛えた“リンゴガール”など、サウンドの振り幅は前作にも増して大きく広がっている。

「1枚目の『みんなのうた』を作っていたときに、やりたくてもやれなかったアイデアがあったんですけど、今回はそれをできるだけ実現させてもらいました。しかもショート・ドラマはもともと大好きだった劇団ひとりさんにやってもらって。いろんな夢が叶って、つくづく幸せ者でございます」。

「目標は流行作家」というミドリカワ書房。『みんなのうた 2』で描かれた物語は、聴き手の経験や感情と重なり合いながら、少しずつ広がっていくはずだ。

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掲載: 2007年03月22日 12:00

更新: 2007年03月22日 17:54

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/森 朋之