インタビュー

GRAPEVINE

疾走するバンド・サウンドが叩き出す自由な音世界を体感しよう!!


「結果、丸1年かけて作ったことになりますけどね。まあ単純にスケジュール調整とかの理由でそうならざるを得なかったという(笑)」(田中和将、ヴォーカル/ギター)。

 実に1年半ぶりの新作だ。これだけ時間をかけたということには、何かしら思うところがあったに違いない――そう勢い込んだ筆者の出鼻は早々に挫かれた。相も変わらず飄々としている。だが本人たちのスタンスはどうあれ、彼らのニュー・アルバム『From a smalltown』には、これまでの円熟したグルーヴ感以上に、ヌケの良い疾走感、より自由度の高いバンド・サウンドが満ちていて、それがとても新鮮に思える。

「去年の初夏に初めてセッションという形で“FLY”が出来たんですよ。その影響もあって特に後半、楽曲が非常に肉体的になっていったのはあるかもしれない」(田中)。

「プロデューサーの長田(進)さんとやれたのも大きかった。いるだけで音の自由度が上がりましたね」(西川弘剛、ギター)。

「判断が早くて言うこともコロコロ変わるんで、かなり技量を問われましたね。刺激的で楽しかったけど」(亀井亨、ドラムス)。

 今年でデビュー10周年を迎える彼らだが、絶えぬ情熱の原動力とは?

「最近思うのは、僕はバンド然としたバンドをやりたいんだなって。楽曲がどうあれ、演奏したときに説得力のあるバンドが。でも、特に新しいものを生み出そうとはあんまり思ってないです。単純に好きな音楽を聴いて〈カッコええな、こんなんやりたい〉って思ったことをやってるだけで」(田中)。

 やっぱり飄々。でも一言一句に確かさが溢れている。多くを語らず、けれど耳には饒舌に訴えかけてくるこの作品と同様に。〈smalltown〉から始まる彼らの新しい未来を感じてほしい。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年03月22日 12:00

更新: 2007年03月22日 20:58

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/本間 夕子