こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

NOISETTES


  ノイゼッツ。可愛らしいようでヤバそうな、なんとも興味をそそるバンド名である。その由来は、実はナッツ入りのチョコレート。UKでポピュラーなチョコレートの詰め合わせのなかで、〈ノイゼット〉と言えばみんなに嫌われて最後まで残ってしまうタイプなのだとか。

「半ばジョークのつもりだったのよ。己を笑える――ロンドンっ子特有のシニカルなユーモアっていうかね。だって最近はどのバンドも、自分たちが好かれてるのか嫌われてるのか、人の目ばかり気にしててバカみたいなんだもの」とシンギー・ショニワは説明する。

 そう、なにも嫌われているわけではないのだが、このロンドン出身のトリオがいまのUKロック界から少々ハミ出た存在であることは事実。メンバーの顔ぶれも異色だ。アフリカのジンバブエにルーツを持つシンギーは、もともと女優志望。ギターのダン・スミスは10代の頃からブルース・バンドで腕を磨いてきたギター・オタクで、ジェイミー・モリソンは少年時代に3年間自宅にこもって練習に励んだというマニアックなドラマー。職人肌のミュージシャンたちと、恐るべき存在感を放つフロントウーマンが結集した、アンチ主流を自認する新人バンドなのである。

 もっとも新人とはいえ、同じアート・スクールに在籍していたダンとシンギーが音楽作りを始めたのは7年前のこと。その後紆余曲折を経て2003年末にジェイミーを加えて再出発し、2006年1月にシングル“IWE”で正式にデビュー。結成当初はほぼインプロヴィゼーションのライヴをプレイしまくって方向性を探り、自然に現在のサウンドに辿り着いたという。

「カッコイイ音楽をやりたいってこと以外、前もって意識していたことは一切ないし、音楽性を限定したくなかった。曲が生まれる経緯も毎回違うわ。その結果、意図せずして独自のスタイルに到達したと思う。いろんな材料が混在しているのは、もちろん全員が多様な音楽を聴いてるってこともあるんだけど、3人のパーソナリティーの違いから来ている部分が大きいわね。3人の衝突がもたらした音なのよ」(シンギー)。

 確かにファースト・アルバム『What's The Time Mr. Wolf?』で彼らが披露するのは、単純なジャンル分けや影響源の特定が困難な、超絶のハイブリッド・サウンド。察するに、ブルースとパンクとサイケデリック・ロックを核とし、ほかにもフォークやらグラム・ロックやらが複雑に入り混じる。それでいて、構成要素はギターとベースとドラムと、シンギーのソウルフル&ワイルドな歌声だけで、生々しい感触をグッと強調。なにしろスタイルで自分たちを語ることを極端に嫌うも、本質がライヴ・バンドであることだけは自負しており、先日も仲の良いブロック・パーティーの東京公演でオープニング・アクトを務め、実力を見せつけたばかりだ。そんな3人だから、スタイル主導に傾きがちなUKロック界には不満も多い。

「レーベルにもマスコミにも無視されてきたし、むしろUKから離れるほどに俺たちの運勢は上向いたよ」とジェイミー。積極的に国外でツアーをしてきた彼らは、なんとUSではモータウンとの契約を勝ち取っている。

「別に地元のシーンを拒絶しているんじゃないんだけど、どうも狭苦しく感じるの。私たちが共感を覚えるUKのミュージシャンって、例えばデヴィッド・ボウイみたいな人。一方でUKらしさに根差していながら、他方で世界観が広くて自由よね。でも最近のバンドは内輪ウケする音楽しかやらないし、〈今日スーパーに行ってジーンズを買って……〉みたいな詞ばかりでしょ? 私たちはそれじゃ満足できないわ。UKにはもっとエキサイティングなことがたくさんある。それを、正直に表現しているのよ!」(シンギー)。

PROFILE

ノイゼッツ
シンギー・ショニワ(ヴォーカル/ベース)、ダン・スミス(ギター)、ジェイミー・モリソン(ドラムス)から成る3人組。2000年に同じアート・スクールに通っていたダンとジェイミーが、ソナーフライというバンドをロンドンで結成。2003年、シンギーの加入を機にバンド名を改めて、本格的なライヴ活動を開始する。2004年にインディー・レーベルのサイド・サラダからEP盤『Three Moods Of The Noisettes!』をリリース。2006年1月にシングル“IWE”でメジャー・デビューを果たす。その後、3枚のシングル・リリースを経て、今年2月にUKでファースト・アルバム『What's The Time Mr. Wolf?』(Vertigo/Mercury/ユニバーサル)を発表。4月11日にはその日本盤がリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年04月05日 17:00

更新: 2007年04月05日 18:09

ソース: 『bounce』 285号(2007/3/25)

文/新谷 洋子