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インタビュー

JYONGRI


 18歳の柔らかいココロ、しなやかで幅広い音楽的素養、そしてBPM速めの楽しいトークに心地良く圧倒されちゃいました。JYONGRIのどこが凄いかと言えば、音楽を吸収するスピードと意欲がハンパない、ということに尽きる。

「きっかけを逃さないんですよ。お店に入ってBGMが良かったら、普通に店員さんに訊きます。あと、学校で〈ダンス・パーティーのCDを作ってくれ〉ってよく頼まれていたんですけど、ネットでビルボードとかを見てダンス・チャートを上から全部聴いて、〈この曲、踊れるっぽい〉と思ったらダウンロードするから、自分のMP3プレイヤーにも自動的に入る。知ったかぶっちゃって、後から聴かなきゃいけないハメになることもありますね。〈あ~アレね、イイじゃん〉とか言いながら、家に帰ってネットでその曲を買うんですよ(笑)。で、次に会った時には自分から話を切り出して〈こっちの曲も良くない?〉とか言って。音楽に関しては負けたくないんです(笑)」。

 そんな負けず嫌いの彼女が挙げるフェイヴァリット・ミュージシャンのリストには、リズム&ブルースからロック、ジャズ、そしてJ-Popまで、さまざまなジャンルのアーティストがズラリ。特に宇多田ヒカルやアリシア・キーズ、そしてローリン・ヒルを〈憧れの人〉として挙げているが、JYONGRIはJYONGRI。デビューほやほやの新人だというのに、みずからのスタンスを語る言葉は実に明確だ。

「昔のソウル・ミュージックにすごく影響されてるんで、自分の曲は〈ソウルのあるポップス〉だと思って作ってます。流行りの音もチェックしているけど、合わせたくはない。ついてきてくれる人がいれば嬉しいけど、人についてきてもらうためにわざわざ曲を書くつもりはないです。いろんな人たちに聴いてもらいたいですけど、それは〈流行ってるから聴いてくれる〉というのではなく、〈私の曲から何かを感じてくれるから聴いてくれる〉っていう……そういうアーティストになりたいです。まだまだですけど」。

 ファースト・アルバム『Close To Fantasy』は、自己紹介に相応しい自信作が詰まった全11曲。前半はデビュー・シングル“Possession”のようにアップリフティングなダンス・ナンバーや、セカンド・シングル“Hop, Step, Jump!”のような明るく弾むポップスを中心にノリノリで。後半はロマンティックなバラード“My All For You”や“Lost Girl”をはじめとしたミディアム・テンポのR&Bをじっくり聴かせ、ゴスペルの要素を備えた壮大な“Wherever”で感動のフィナーレを迎える。低音域の粘るような迫力と高音域に突き抜ける爽快感、自然なフェイクを交えた彼女の歌声は、とてもフレッシュで心地良く耳に響く。

「アルバムの完成度や曲の繋がりとか、そういうことはまったく考えずに、とにかく1曲1曲に力を込めて全力で作りました。これを人に聴いてもらって、自分の音楽がどういうふうに世の中で受け入れられるのかを知ったうえで、いろんなことを試していきたい。ここを幹としていろいろと枝葉を広げていきたいと思います」。

 歌詞もおもしろい。完璧なバイリンガルゆえ(?)の独特の語彙と語感を駆使した、本人いわく「想像の世界と現実の世界を行き来してます」というラヴソングの世界が存分に楽しめる。ちなみに筆者が個人的に好きなのは、“Possession”における〈亭主関白なキミ〉と〈束縛するワタシ〉とのベスト・カップルですね。

「〈亭主関白〉っていうと重い感じがするけど、私はそれが好き。だから私も束縛します……って、何をぶっちゃけてるんだろう(笑)。ちょっと古風なんですよ、考え方が。特に男女関係になるとそうで、女がちょっと下がってるほうが私は好き」。

 今後ますます注目を集めるであろう新進シンガー・ソングライターの世界は、まだまだ奥が深そうだ。

PROFILE

JYONGRI
大阪府出身、現在18歳のシンガー・ソングライター。幼少期にインターナショナル・スクールへ入学してクラシック・ピアノのレッスンを受け、8歳の時に映画「天使にラブソングを2」を観たのをきっかけにゴスペルを習いはじめる。14歳から本格的に歌のレッスンをスタートし、15歳になった2004年の夏にバークレー音楽院の〈5 Weeks Summer Performance Program〉に参加して以来、みずから詞曲を制作するようになる。2006年の夏に大学へ進学すると、12月にはデビュー・シングル『Possession/My All For You』をリリース。今年2月のシングル“Hop, Step, Jump!”を経て、ファースト・アルバム『Close To Fantasy』(東芝EMI)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年04月12日 17:00

更新: 2007年04月12日 17:10

ソース: 『bounce』 285号(2007/3/25)

文/宮本 英夫