インタビュー

Nate James

温かいヴォーカルとスムースなサウンドに加え、社会意識の高さをも表現した新作が登場!


 スティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイなどオールド・スクールなソウルを聴いて育ったネイト・ジェイムスは、それらの影響を自分なりの感性でフレッシュに表現しようと、2005年にデビュー作『Set The Tone』を制作した。彼自身の明るい性格を反映したようなハートウォーミングなヴォーカルも相まって、同作は昨年日本でヒット。その後、日本人バンドのPE'Zとのコラボ・シングル『LIVE FOR THE GROOVE E.P.』も好評で、新作が待ち望まれていた彼から、このたびセカンド・アルバム『Kingdom Falls』が届けられた。今回は前作で示されたネイト流ソウルを少し進化させた内容で、それがそのままコンセプトとなっている。

「音の幅をもっと広げようっていうところから出発したアイデアで、プログラミングされたビートやストリングスなどを随所に採り入れた〈ハイブリッド・サウンド〉が今回のテーマ。僕が頭に描いていたサウンドをプロデューサーのダニーSが具現化してくれた。大半の曲を彼と組んで作っているよ」。

 ダニーはハウス系のプロデューサーだが、レコーディングの手法はオーガニック。そこにナチュラルさが感じられ、今回のアプローチが〈変化〉ではなく、〈前進〉であることがわかる。ソングライティングは今回もネイトが中心となっているが、歌詞の面では変化が見られる。恋愛などの経験を元にしたリアルな世界が描かれていた前作に対し、今回は視点が社会にも向けられているのだ。なかでも印象的なのが表題曲の“Kingdom Falls”である。

「イギリスの慈善団体から〈ルワンダの親善大使になってくれないか〉というオファーがあって、昨年現地を訪ねたんだ。ルワンダで大虐殺が起きたのは94年だけれど、いまも人々を取り巻く環境は劣悪だった。その時に自分との境遇の違いに愕然として、僕があたりまえだと思っている存在──家とか家族とかを失ったらどうするんだろう、という思いに駆られたんだ。この曲はそこから生まれたもので、アルバムの方向性を定めてくれた」。

 新作『Kingdom Falls』はサウンドばかりでなく、歌詞や音楽に対するスタンスなど、すべてにおいてネイトが〈前進〉というより、大きく〈成長〉を遂げた作品だと言えるだろう。

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掲載: 2007年04月12日 17:00

更新: 2007年04月12日 17:10

ソース: 『bounce』 285号(2007/3/25)

文/服部 のり子