JAZZ JUICE
伝統の果実をフレッシュなジュースに再生するダンサブルでスタイリッシュなコンビが登場!!
かのジャイルズ・ピーターソンが85年に編纂し、後にシリーズ化もされた『Jazz Juice』という名コンピがある。そこにはアート・ブレイキーやマイルス・デイヴィスらと共にアイアートやセルジオ・メンデスらの楽曲が並べられていたのだが、そのことを知っていれば同コンピから名前を取ったこのジャズ・ジュースなる2人組の志向が何なのかも想像できるはず。実際にこのたび日本盤化された彼らのファースト・アルバム『52nd Street』は、ホーンのサンプリングを効かせたファンキー・ボッサの“Too Horny”で幕を開け、シングルで話題となった“Atravessar”を筆頭に、ラテン・ジャズやブーガルー、サンバなどを基調にした温かく心地良い生のグルーヴが満載。高いミュージシャンシップと自由度の高いプロダクションを上手く調和させる術は、2人のバックグラウンドによるものが大きいのだろう。片割れのグレアムBは「良質なダンス・ミュージックが溢れているのにクズな曲をプレイしなければいけないフラストレーションから」自身で制作を始めたというDJで、一方のアラン・エスキナシは、イエスやスティーリー・ダンらと仕事をしてきたヴェテランの裏方ミュージシャンだという。
「僕らは作業を始める前に、まずグレアムのDJセッションをたくさん聴くんだ。彼がプレイしたものすべてを合体させて曲を作っていく。その後に2人でアレンジするんだ。演奏家としての僕はひとつの曲にアイデアを詰め込みすぎてしまうからね」(アラン)。
「昔の曲をリエディットしたりするんだけれど、それをプレイヤーが演奏しやすい感じに変えていくんだ。今回のアルバムは過去のサウンドを尊重しつつ、ライヴの演奏者たちと共に新しい音楽を生み出していく過程を生中継しているようなアルバムだね」(グレアム)。
「機材や録音技術の面でも、僕はなるべく昔といまの両方の技術を使いながら制作するようにしているよ」(アラン)。
ちなみに『52nd Street』というアルバム・タイトルは、もちろんNYの〈ジャズ・ストリート〉こと52丁目に由来するものだ。かつてマイルスやチャーリー・パーカーら数多くのジャズメンが新しい音楽を創造したのと同じ場所を起点に、ジャズ・ジュースの2人もまた新しいダンス・ミュージックを作り続けていくのだろう。