インタビュー

Papa Grows Funk

ニューオーリンズ・ファンクの雄は止まらない。真摯な思いを込めた新作が、世界に向けて高らかに響く!


「僕がニューオーリンズ・ファンクを愛しているのは、ひとつひとつの楽器が独自のリズムを持っていて、その異なるリズムを同時に演奏してパズルをはめていくようなものだからさ。そこからいろいろなリズムのヴァリエーションをインプロヴァイズして、メロディーやハーモニーとミックスしていくんだ」。

 パパ・グロウズ・ファンクのリーダー、ジョン・グロウ(キーボード/ヴォーカル:以下同)はそう語る。彼らは日本人ギタリストの山岸潤史を擁する5人組。2000年4月に行ったジャム・セッションをきっかけに結成され、2001年にアルバム『Doin It』でデビュー。以降、2枚のアルバムと1枚のライヴ盤をリリースしてきた。日本ではこれまで輸入盤のみのリリースながら口コミで多くのファンを獲得してきた彼らが、ニュー・アルバム『Mr. Patterson's Hat』で待望の日本デビューを果たす。

「メンバーひとりひとりがアルバム全体のサウンドに大きく貢献したこの作品で、僕たちはついに自分たちのアイデンティティーを見つけたと感じているよ」と語る今作は、タイトなリズム・セクションに扇情的なサックスが絡む“Gorillafaceugmopotamus!”で幕を開け、山岸が切れ味抜群のカッティングで魅せる“My Man”や、ハモンド・オルガンが唸りを上げる“Gone Gonzo”など、音楽の聖地=ニューオーリンズ発の、世界に誇るべきファンク・サウンドにはますます磨きが掛けられている。その一方で、これまでの作品では数曲ずつに留まっていたヴォーカル・ナンバーが収録曲の半数を超えているのも本作の特色だろう。

「ファンク・ミュージックでは、人々を踊らせてハッピーにするグルーヴを生み出すのは簡単なんだ。難しいのはストーリーを語ること。僕らはそのことにずっと取り組んできたし、(今作では)ストーリーやメッセージを伝える強い曲ができたと信じている」。

 そのメッセージとは無論、〈カトリーナ〉以降のニューオーリンズとそこで暮らす人々、そしてまだ戻って来られない人々への思いだ。ちなみに、タイトルにある〈Mr. Patterson〉とは、被災後すぐに活動を再開した彼らのライヴに以前と変わらない姿で通い続ける常連客のことだという。

「満員で熱気ムンムンの観客席を見渡すと、彼の帽子が左右にひょいひょい揺れているのが見える。そんな時、まさにニューオーリンズが〈カトリーナ〉から回復していることを実感するんだよ」。

▼このたび日本盤化されたパパ・グロウズ・ファンクの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年04月12日 17:00

更新: 2007年04月12日 17:06

ソース: 『bounce』 285号(2007/3/25)

文/野崎 知道