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インタビュー

Qomolangma Tomato

混沌とした柵(しがらみ)から抜け出さんとするエモーションに溢れた、異形のニューカマ-が登場!!


「初めて作ったデモのなかに、“柵(しがらみ)抜け”っていう〈混沌としたものから抜ける〉っていうイメージの曲があって。それがこのバンドのキーワードに近いんじゃないか、って思ったんですよね」(石井成人、ヴォーカル)。

 不穏さを醸し出すギター・リフと渾身の力で絞り出される石井の絶叫で、初っ端から度肝を抜かれるQomolangma Tomato(チョモランマ・トマト)のファースト・アルバム『チョモと僕は柵の中』。大衆のなかにまぎれた個人の思考……焦燥や諦め、憂鬱、希望などの不条理な連鎖、つまり石井が言う〈柵〉を実況するかのごとく羅列されていく言葉のカオスは、聴き手=大衆を、そして大衆の一部である彼ら自身をも容赦なく呑み込む。

「〈お前ら!〉とか言っても自分のことだろ、みたいな。そういう二人称の使い方が好きなんですよね。(影響を受けた)INUは、そういうところが自分にはドンピシャで。〈町田町蔵、あれで19歳かい!〉って。今回のアルバムの1曲目(“through your reality”)も自分が19の頃の曲なんですけど、その時にちゃんと(言いたいことを)言い切れてるんだったら、あれから3年以上経ったいまも敬意を持ってその歌を歌おうと。沸々とした気持ちをリスペクトする大人になろう、ってやってます」(石井)。

 ほぼ無名でありながらも、昨年は〈サマソニ〉への出演権を勝ち取り、アグレッシヴなパフォーマンスで〈ISLAND STAGE〉に集まった約500人の観客を虜にした彼らは、横浜や横須賀を中心に活動する4人組。初の全国流通盤となる本作で鳴らされているのは、ロック~パンクを解体しては危ういバランスで再構築していくかのような、ポスト・ハードコア的な衝動とイビツさ、そしてポップネスを孕んだサウンドだ。

「ギターの小倉(直也)は、フガジとかその界隈が常に頭にあるヤツなんですけど、俺が最近聴いてるのはハードコアとはまったくかけ離れた音楽ばっかで。このバンドは、別々に自分の地の部分を作ってきた4人が集まって、何も考えずにパッと出した音、その瞬間の感覚だけに従ってるんですね。それがたぶん、曲に出てるんじゃないかと思います」(山中治雄、ベース)。

「狙っている音楽性はない」(石井)という彼ら。だが、音楽を作るうえでの揺るぎない基盤はある。

「キャッチーなことがやりたいですね。聴いてすぐ〈よし!〉って思うみたいな」(山中)。
▼文中に登場したアーティストの作品を紹介。

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掲載: 2007年04月26日 20:00

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/土田 真弓