インタビュー

ミドリ

セーラー服と機関銃サウンドをぶっ放す、大阪地下シーンの最終兵器ふたたび!!


 大阪のアンダーグラウンド・シーンから登場した新星にして孤高のバンド、ミドリ。ハードコア・パンクにジャズやプログレを掛け合わせたヘヴィーなサウンドと、歌謡曲ばりにキャッチーだが歌ともシャウトともつかない大阪弁が乗っかった、独特すぎる歌世界。そして、セーラー服でギターを掻き鳴らし、客席へ乱入する後藤まりこ(ヴォーカル/ギター)の特異なキャラクターが各方面で噂となっていた彼らが、待望のニュー・アルバム『セカンド 』をリリースした。まず、本作を知るにあたって、バンドを取り巻く状況の変化について訊いてみよう。

「別になんもないと言ったら嘘になるけど、それで自分らになんか変化があったとか言うても嘘になる。レコーディングではいろいろあったけど、短い期間でみんながんばったし、結果として、2006年12月のミドリというバンドの〈いま〉を出せたと思います」(後藤まりこ:以下同)。

 これまでになく力強い縦横無尽のグルーヴを獲得しながらも、ミドリのロック・バンドとしての勢いやスリリングな危うさは決して薄れることはない。ミドリの音楽の本質はやはり後藤本人の言うように、いま、この瞬間にどれだけ自分たちのコアをさらけ出し、聴き手と深く交われるかの一点に尽きるのだ。それがスマートにできるような人間には、きっとロックなんか必要ない。自分でも説明できない思いや衝動に混乱しながらも、それをなんとか相手に伝えたくて、でも上手く言葉にできなくて、〈涙を流すだけが女じゃあない〉とか、ついつい〈時には男の上にまたがり腰を振ったり〉、〈襟首つかみボコボコに殴り倒したり〉と“あたしのお歌”で歌ってしまう後藤は、あまりに純粋で無器用で、どうしようもなくロックだ。

「ライヴは毎回、凄い楽しいけど怖い。正直、ライヴの時の記憶は早回しで、コマ送りで、飛ばし飛ばしでしか覚えてないんです」。

 ミドリの音楽は、そんな刹那的ゆえにヒリヒリと切なく、聴き手の〈いま〉に突き刺さる。以前の〈処女膜を突き破れ!!!〉なんてキャッチコピーに引いてた人も、〈確かにあった/あの時、手にした/性欲か真実か見分けもつかぬ/気持ちいいところ〉(“うわさのあの子”)にイクには、まずは実体験あるのみ、です。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年04月26日 20:00

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/井口 啓子