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インタビュー

Consequence


  ジョン・レジェンドやコモンと契約し、シーン内外から注目を集めているカニエ・ウェストのレーベル、ゲッティング・アウト・アワ・ドリームズ(以下GOOD)が新たに契約したラッパー、それがコンシークエンスだ。その名前を聞いて懐かしい(失礼)と思った人もいるかもしれない。そう、彼はかつてモス・デフと共にトライブ・コールド・クエスト(以下ATCQ)周辺から登場し、成功が半ば約束されていたラッパーだったのだ。しかし……。

「エレクトラ(の傘下にQ・ティップが設立したミュージアム・ミュージック)からオレのアルバムを出すという計画があったんだけど、ATCQの解散でそのプロジェクトもお蔵入りになっちゃったんだ。99年にはレラティヴィティと契約したんだけど、レーベルが行き詰まってなくなったからオレの契約もおしまい。リリースもできなくて、まったく時間の無駄だったね」。

 その後の彼はミックスCDシリーズ〈The Cons〉など、アンダーグラウンドでの活動を中心としていくのだが、モス・デフらを手掛けるプロデューサー、88キーズの紹介でカニエ・ウェストと知り合い、彼のヒット・アルバム『The College Dropout』に参加。それをきっかけにGOODと契約し、ようやくメジャー・デビューに漕ぎ着けることができたという苦労人なのだ。それだけに『Don't Quit Your Day Job!』というタイトルからも今回のファースト・アルバムに賭ける熱い思いが感じられる。

「〈夢〉と〈現実〉との葛藤だね。それは皆へのアドヴァイスであると同時に、自分への助言でもあるんだ。音楽が好きでそれで成功したいんだけど、現実は金を稼がないと生活できない。それで普通の仕事をするんだけど、音楽への夢を捨てきれないんだよ。ATCQの解散後、実際にオレもしばらく車の会社で働いてたことがあるしね」。

 彼ほどのキャリア/コネクションの持ち主ならば、もしくはカニエの政治力をもってすれば、メジャー・デビューを祝すような豪華な制作陣を集めることも容易だったはずだが、「自分のサウンドにこだわりたかったから」という意志の下、今回はほとんどの楽曲をコンシークエンス自身がプロデュースしている。トラックメイカーとしてのイメージはまだまだ薄い彼だが……。

「必要に迫られて覚えたという感じだね。もちろんATCQのアリやQ・ティップにも曲の組み立て方などを教わったよ。マーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーといったモータウン・サウンドの影響も凄くあると思うし、ドクター・ドレーやピート・ロックの影響も受けているんだ」。

 ヤングロードが手掛けた先行シングル“Callin' Me”をはじめ、『Don't Quit Your Day Job!』では、ATCQ~ネイティヴ・タン全盛時を彷彿とさせると同時に、いかにもGOOD産らしくサンプリング色の強いサウンドが中心となっている。

「この“Callin' Me”は、皆が懐かしいと思う温かみのあるビーツだったからシングルにしたいと思ったんだ。やっぱり、ああいうサウンドを懐かしいと思う人も凄く多いだろうしね。そこをオレが埋めてあげたいなっていう気持ちもあるし。でもオレとしては古い音にこだわるつもりじゃないし、ただ〈良いビーツ〉だけを求めてるんだ。それをネイティヴ・タンっぽいと言われれば、そうなのかもしれないけどな」。

 ちなみに、インパクトの強いジャケットにまず目を惹かれる『Don't Quit Your Day Job!』だが、このイラストについては「もちろんオレをモデルにしたキャラクターさ。これでもガキの頃は絵を描いたりしてたんだぜ。ジャケのイラストはプロに頼んだんだけど、オレによく似てるだろ(笑)?」とのこと。こうした意表を突くセンスもカニエ譲りなのかもしれない。

PROFILE

コンシークエンス
NYはクイーンズ出身のMC。Q・ティップの従兄弟という縁から、93年にトライブ・コールド・クエスト“The Chase, Part II”に参加。彼らの96年作『Beats, Rhymes And Life』では6曲に登場して脚光を浴びる。その後はブランクを挿みながら、AMBIVALENCEやクリエイターズらの作品に参加。2004年、カニエ・ウェスト“Spaceship”への客演を契機にゲッティング・アウト・アワ・ドリームズと契約し、ストリート・アルバム『Take 'Em To The Cleaners』を発表。リトル・ブラザーやミリ・ベン・アリ、パティ・ラベルの作品に客演して支持を広げていく。このたびファースト・アルバム『Don't Quit Your Day Job!』(Getting Out Our Dreams/Columbia/ソニー)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年05月02日 20:00

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/Masso 187um