ELIZABETH SHEPHERD TRIO
ジャズをモダン&ヒップに提示する、カナダからの超新星!!
ファイヴ・コーナーズ・クィンテットなどの例を挙げるまでもなく、生粋のジャズ・ミュージシャンによるクラブ・シーンへの接近が盛んな昨今、またも注目すべき新人の登場だ。輸入盤が耳の早いリスナーの間で話題となっていたカナダのシンガー/ピアニスト、エリザベス・シェパードのトリオ名義でのデビュー作『Start To Move』が日本盤でリリース! 6歳でクラシック・ピアノを始め、大学で音楽教育を受けながらも次第にジャズに傾倒、地元トロントでスコット・ケンプ(ベース)とコリン・キングスモア(ドラムス)と意気投合し、トリオ編成に。3人の一糸乱れぬアンサンブルと緻密なアレンジは現場で叩き上げた賜物だろう。だが今作には、何より彼女のパーソナリティーがギラリと光っている。
「モーツァルト、ジョージ・マイケル、スティーヴィー・ワンダー……他にもあらゆるジャンルの音楽にインスパイアされているわ」(エリザベス・シェパード、以下同)と語る彼女の柔軟な作曲センスは特筆すべきもの。また、先述のファイヴ・コーナーズ・クィンテットやジャザノヴァ、クァンティック・ソウル・オーケストラらと共演するなど、クラブ・シーンとも積極的に交流している。
「クラブ・ミュージックは素晴らしいし、踊るのも大好き。でも、〈ダンス・ミュージックの反復性と、ジャズのアドリブ性を調和させる良い方法があったら〉といつも思ってるの」と鋭い発言も。そのあたりの課題には「いちばんのお気に入り」と語るタイトル曲でのヒップホップの如きブッといグルーヴや、クリフォード・ブラウンの斬新なカヴァー“George's Dilemma”における、マシュー・ハーバートを想起させるようなハーモニー(もっともこれは、彼女の敬愛するアビー・リンカーンの器楽的唱法の影響かも)で答えてみせている。その一方で、マイルス・デイヴィスのダンス・ジャズ古典“Four”や、「フェイヴァリット・ピアニスト」だというハービー・ハンコックに捧げたキラー・ブラジリアン“Melon”などでは開拓者たちへのリスペクトも表現。燻し銀のヴォーカルがスピリチュアルに響く“Roots”や、随所で聴かせるスキャットなど、時代が求めているであろう要素がここにはすべてあるんだから、奇跡的ですよ、これは。
「まずは聴いて楽しんで、そこで何か新しい発見をしてくれたら嬉しいわね」と語る彼女。今後共演したいミュージシャンを訊いてみると、「たくさんいるけど……そうね、ロイ・ハーグローヴとハービー・ハンコック。ファンタジーの話だけど」。
何をおっしゃる、こんな素晴らしい作品を聴かせたら、向こうからオファーが来ますって!