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インタビュー

ketchup mania


 ガールズ・パンクの化粧を落とし、素顔をさらしたロック・バンドへと鮮やかな変身を遂げている。紅一点ヴォーカリストであるHIROを擁する名古屋出身の4人組、ketchup maniaのニュー・アルバム『U・R・G・E』は、あらゆる点において一皮も二皮も剥けたことを知らせてくれる渾身の内容に仕上がった。

「最初にいたメンバーは僕とHIROちゃんだけなんですよ。女の子ヴォーカルで、わりと速めのものをやろうって。まだ学生だったんで、あまり何も考えずに〈楽しい〉というのがメインにありましたね」(DAI)。

「ホント深く考えずに、明るくて速い曲が多い感じでしたね」(HIRO)。

〈純粋に音楽を楽しもう〉と99年に結成し、インディーで精力的に活動を続けていた彼ら。メジャー・デビューを経て発表した初のフル・アルバム『GREETINGS FROM TOKYO』では、ポップで荒々しいパンク・サウンドによりいっそう磨きをかけていた。だが今作では心機一転、新たなレーベルと契約を交わし、内容的にもパンキッシュな表情を残しつつ、さらにロック本来の躍動感がこれでもかと叩きつけられている。

「移籍して1発目のアルバムということで、制作に向かううえでの気持ちも違ったんじゃないかなと思います。再出発というか、仕切り直しというか〈ここから行くぞ!〉という感じで。とにかく、いままで以上に曲に対する思い入れが強いです。環境の良さも相まって、完成度が高くなったんじゃないかな」(Yosei)。

「今作の曲の大部分は、前のレーベルとの契約が終わってから作った曲が多いんですよ。〈もっとやってやるぜ〉という気持ちが強くて。気持ち的にも楽しかったんですよね。それこそ初期衝動ですね。バンドを始めた頃の楽しさみたいなものが詰まってると思うんですよ。純粋に〈楽しいな〉と思ったときに作った曲ばかりなんで。だからアルバム・タイトルも、〈初期衝動〉という意味である『U・R・G・E』にしたんです」(DAI)。

「その気持ちに僕も合わせただけなんで、いつもと変わらないですけどね。インディーを経て、メジャーに行って、移籍をしてと。ただ〈バンドとして成長したなぁ〉と思って」(WANI)。

 バンドが一枚岩となり、魂を全注入したかのような感情の開放ぶりは、間違いなく過去最高と言える充実度だ。特にHIROのヴォーカリストとしての表現力は格段に増している。女性らしさを押し隠すのではなく、むしろそこを最大の武器にした〈すっぴん状態〉に圧倒されてしまう。キラキラしたお姫様的世界観と等身大の妖艶さを兼ね備え、本音を言えない女の子の代弁者的役割を果たした歌詞内容は超ストレートだ。その溢れ出た感情を基底にしているからこそ、歌声も七色の輝きに満ちている。

「1曲1曲に対するアレンジの時間も増えたし、Aメロやサビの位置をさらに考えるようになって。歌詞に関しても1文書くのに3~4時間かけたり、曲によっては1曲のなかの歌詞のストーリーをどう持っていくかを凄く考えたりもして。歌詞の内容は引かれる部分もあるかもしれないけど、もう全部出してしまえって。あと、歌は歳相応を意識しましたね。カワイイのも好きだけど、〈今回は大人っぽく〉って」(HIRO)。

 歌声、歌詞、楽曲のすべてにおいてネクスト・ステージに上がったことがわかってもらえるだろう。また、ノラ・ジョーンズをはじめ、グリーン・デイやDAIのフェイヴァリット・バンドであるワイルドハーツらの作品を手掛けたことでも知られるテッド・ジャンセンがマスタリングを施した今作は、音質も抜群に良い。シャキッと輪郭が立ったサウンドは、ketchup maniaが今作でもっとも出したかったという衝動性を、鮮明かつ獰猛に引き出している。

PROFILE

ketchup mania
HIRO(ヴォーカル)、DAI(ギター)、Yosei(ベース)、WANI(ドラムス)から成る4人組。99年に名古屋で結成。2003年4月、K.O.G.Aのコンピ『GOOD GIRLS DON'T』に“IT'S IMPORTANT”で参加し、7月にはGroovie Drunkerよりファースト・ミニ・アルバム『MUSIC FREAK』を発表。その後、2004年6月の『...JUST IN LUST』、2005年12月の『Love Me Til U Don't』とミニ・アルバムの発表を重ねて、12月にはシングル“シングルベリー”でメジャー・デビューを果たす。2006年にはファースト・フル・アルバム『GREETINGS FROM TOKYO』を発表。レーベル移籍を経て、今年5月9日にニュー・アルバム『U・R・G・E』(トイズファクトリー)をリリースする予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年05月17日 23:00

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/荒金 良介