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インタビュー

CHERRYBOY FUNCTION

地下ダンス・シーン最高峰のトラックメイカー、ついに初アルバムを発表!


  昨年のアンダーグラウンド総本山フェス〈RAW LIFE〉のハイライトとして、CHERRYBOY FUNCTION(以下、CHERRYBOY)のライヴを挙げる人は少なくないだろう。畳み掛けられる艶やかなエレクトロニック・ビートと、それを笑顔と嬌声で迎え入れるオーディエンス。二日間に渡ったフェスの締めくくりにふさわしい、多幸感にあふれまくったその光景は、今後のダンス・シーンを担う新星の登場を、何よりも雄弁に物語っていた。

そんなエポックなライヴから約半年を経て、ついにCHERRYBOYの初アルバム『SOMETHING ELECTRONIC』が届けられた。テクノ/ハウスの官能的なグルーヴの中を、瑞々しいメロディが飛び交う、最高にロマンティックな全13曲。いくつかのコンピ提供曲を通してしかうかがい知ることができなかった、トラックメイカー=CHERRYBOYの実力の全貌に圧倒される大傑作だ。

  「収録しているのは、ここ3、4年間に作っていた楽曲です。リリースの話は随分前からいただいてたんですが、なかなか完成させることが出来なかった。コンピなら1曲に注ぎ込めばいいけれども、アルバム単位となると自分の中でのゴー・サインが出づらかったんです。色々考え過ぎてしまったり。でも、それじゃあいつまで経っても出来ないわけで、とにかくまず一歩踏み出した。そこから一気に仕上げていきました」(CHERRYBOY)。

本作のリリース元は、かつて〈Transonic〉レーベルを主宰し、90年代のクラブ・カルチャーを先導した永田一直による新レーベル〈ExT Recordings〉。異例のクロスオーヴァー・ヒットを続けているDE DE MOUSE『TIDE OF STARS』に続いて、これがレーベル第2弾となる。ここで永田氏にご登場願おう。

  「(最初に会ったとき)CHERRYBOYは、僕が関わっていた東京のテクノ・シーン黎明期のマニアで。でもテクノ・オタクって結構いるものだから、〈ああ、そう〉って感じだったんです。デモテープをもらっても、名前は権田山一雄(CHERRYBOYの別名義)だし、ジャケットには何故か〈不況〉って書いてあるし、絶対聴かねえよ、と(笑)。でも聴いてみてびっくりした。僕は04年に〈Transonic〉を止めてから、一切やる気をなくしてたんですけど、CHERRYBOYのトラックを聴いて、もう一度レーベルを立ち上げようと思ったんです。と言うのも、しばらく第一線で活躍してる若い連中を見てたのですが、彼らはそこら中でパーティーはやるんだけど、レーベルをやる奴がほとんどいなかった。そしたら〈先輩がなんでやらないんですか〉っていう空気を出しやがる。みんな、中高生の頃に〈Transonic〉を聴いてたんです。だったら俺がまたやるしかないと」(永田一直)。

アルバム『SOMETHING ELECTRONIC』は、そのタイトルが象徴するように、徹頭徹尾エレクトロニックな音のかっこ良さ、気持ち良さを追求したダンス・トラックで統一されている。先鋭性ばかりが求められがちなテクノの全史から、普遍的な魅力を掬い上げ、フレッシュな形で提示してみせるその手腕は、CHERRYBOYの独断場だ。

「まず、自分はこういうスタイルしかできないっていう動かせない部分があるんですよね。それから、賞味期限の短いものは出したくないという意図的な部分もある。それが半々ですね。とはいえ、いまパーティーでかかって違和感のないものじゃなきゃ駄目だと思うんです。やっぱり今は2007年だろって気分がありますから」(CHERRYBOY)。

CHERRYBOYの中に見出せる〈2007年〉的な気分。それは表面的な音の手触りではなく、彼の作る音楽の根っこにある、きらきらとした世界観だろう。ロマンティック、エモーショナル、アーバン……現在のダンス・フロアが求めているこうした要素が最も強く息付いているのが、アルバムの最後に収められた名曲“THE ENDLESS LOVERS (505)”だ。

「“THE ENDLESS LOVERS (505)”は永田さんから〈もっとこうした方がいい〉っていう意見をいただいて、何度も直して収録するに至ったんです。井の頭公園で花見をした時も、ラジカセで聴きながら〈これどうよ?〉と話し合って」(CHERRYBOY)。

「やっぱり去年の〈RAW LIFE〉での“THE ENDLESS LOVERS”があまりにも感動的だった。どの曲もレベルは高いんだけど、やっぱり自分の中で1曲となるとあれになるんですよ。でも最初はあの曲を隠しトラックにするって言い出したから、ちょっと待てよと(笑)。あの曲が一番最後に入ることによって、アルバムとしてまとまったと思います。僕がディレクションしたのはそこだけですね」(永田)。

〈時間が許す限りは日々、曲を作っている〉というCHERRYBOY氏。ファースト・アルバムを出した勢いに乗って、次回作は早々に届けてくれるのでは?

  「いや~なかなか……(笑)。でも今年は僕以外にTRAKS BOYSも出すし、DE DE MOUSEももう1枚出すし、周りの人たちのリリースが多いので楽しみですね」(CHERRYBOY)。

「これまでのダンス・シーンはパーティー的な盛り上がりでしたけど、今年は作品リリースの盛り上がりがある。〈ExT Recordings〉もどんどん出していきます。これからまた面白くなるんじゃないですかね」(永田)。

CHERRYBOY FUNCTION『SOMETHING ELECTRONIC』
1.INTRO
2.GALAXY OF FAKE
3.COMPRESS
4.DULL BOY
5.DOUBLE TROUBLE
6.FOGBOUND
7.TROT
8.ME & YOU
9.SUNSET QUANTIZE
10.SOMETHING ELECTRONIC
11.CITY TO CITY
12.FALL OUT
13.THE ENDLESS LOVERS (505)(試聴する♪

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2007年05月31日 18:00

更新: 2007年05月31日 18:03

文/澤田 大輔