インタビュー

Kelly Rowland

“Dilemma”でのNo.1デビュー、デスチャの華々しい復活と幕切れ、恋の始まりと終わり……激動の日々を乗り越えて、ケリー・ローランドはふたたびステージのセンターに立つ。もう横には誰もいない。次は彼女が輝く番なのだから!

SAY MY NAME, AGAIN


 デスティニーズ・チャイルドの解散後、先手を切って大暴れしたのはやはりビヨンセだった。セカンド・ソロ作『B'Day』でその存在を誇示する一方、映画「ドリームガールズ」で(結果的にジェニファー・ハドソンを引き立てるような形になったとはいえ)女優としての成長を窺わせたし、先日の来日公演も記憶に新しいところだ。そんなビヨを横目に、もうひとりのオリジナル・メンバーであるケリーも、自分自身を存分に表現するべくセカンド・ソロ・アルバムを温めていた。当初は『My Story』というタイトルで昨年の今頃に発表される予定だったが、マネージャーであるビヨパパ(マシュー・ノウルズ)の意向などにより先送りにされていたという。内容も前作『Simply Deep』の流れを汲むオルタナティヴな要素を持ったものになると言われていたが、このたび完成した『Ms. Kelly』を聴く限り、どうやら制作途中で軌道修正をしたようだ。

「レコーディング初期に作った曲も満足してたんだけどね。でも若々しい気分の自分と同じくらい若々しいサウンドにしたくなったの。私は自分にこう語りかけたわ、〈ケリー、あなたは25歳なのよ。パーティーが大好きで、自分の曲がクラブでかかってほしいと思ってるんじゃない?〉ってね!」。

 まさにその言葉どおりに溌剌としていてセクシーなのがリード・シングル“Like This”。ショーン・ギャレットとの共作にポロウ・ダ・ドンのプロデュース、さらにイヴのラップがドンピシャなキラー・トラックだ。

「彼女のエネルギーがこの曲にピッタリだと思ったの。聴いてすぐ、シングルになるって悟ったわ!」。

 他にも、スコット・ストーチによるヒューストン・ビーツ風な“Come Back”や、高速の歌フロウにデスチャ時代がチラリとよぎる“Put It In”など、先の発言を裏付けるようなトラックが並ぶ。そしてスヌープとのコラボ“Ghetto”で見せる彼女の新たな表情もいい。

「これは〈バッド・ボーイ好きのグッド・ガール〉の歌で、私のお気に入り曲のひとつね。すごくレイドバックした曲だから、スヌープを入れなくちゃって思ったの。彼は楽曲に特別なサムシングを与えてくれたわ」。

 同曲でプロデュースにあたったタンクをはじめ、ソウルショック&カーリーン、ソランジュ、ロックワイルダーといったメンツもサポート。特に中盤以降のミディアム~スロウ群での歌声は以前にも増してしなやかで、温かい。なかでも映画のサントラ用に書かれたというビリー・マン制作の“This Is Love”は、エモーショナルかつ優しさに溢れたヴォーカルがシンガー/女性という両面での成長を証明するかのようだ。そういえば1年ほど前には、婚約者だったダラス・カウボーイズのロイ・ウィリアムスとの破局も経験している彼女(だから『Ms. Kelly』ってわけじゃないみたいだが)。そういった出来事も乗り越え、「本来の自分でいられるということ」を体現してみせたケリーは逞しく、なんともイキイキとしている。さまざまな変化を吸収したうえで辿り着いたこのアルバムは、彼女の新たな名刺代わりの一枚になるだろう。
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掲載: 2007年06月28日 19:00

ソース: 『bounce』 288号(2007/6/25)

文/佐藤 ともえ