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インタビュー

大山百合香と河童のクゥと夏休み

新進シンガーの優しい歌声が、夏映画の新たな名作と素敵な出会いを果たしたら……


  曲全体が雨上がりの路面のようにキラキラと光っている。そんな感覚を抱かせてくれる大山百合香のニュー・シングル“夏のしずく”。昨年ファースト・アルバム『KIND OF BLUE』をリリースし、ナチュラル・テイストの柔らかい歌声が評判を呼んだのも記憶に新しいが、本作ではいっそう表現力に磨きを掛けた彼女を確認することができる。さてこのシングルは、今夏公開となる映画「河童のクゥと夏休み」の主題歌だ。作品の素晴らしさに圧倒されて、「曲を作る際に正直プレッシャーを感じていた」と彼女は語る。

 「でも、この映画に魅了された作詞家の山本成美さんが描き出す心象風景と、作曲の朝本浩文さんが奏でるしみじみと力強いメロディーが魔法を掛けてくれたんです。本編を観たとき、流れる涙をどうしても止めることができませんでした。人はそれぞれ心の奥底に、嬉しいことも悲しいこともさまざまな物を抱え込んでいるんだなって、改めて気付かされた気がしますね」。

  では、映画の話をしよう。まず映画ファンに向けては、相米慎二監督作品「夏の庭 The Friends」に並ぶ夏映画の傑作だと言っておこう。あらすじを一言で説明すると、河童のクゥとそれを見つけた少年のひと夏の物語。監督・脚本は、数々の映画誌で絶賛された劇場公開作「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」を作った原恵一だ。キラキラした画面を作るには、ただ画を明るく光らせればいいってもんじゃない、と言い聞かせるようにして一つ一つのショットを丹念に積み重ねていく原監督の仕事ぶりが素晴らしい。

 “夏のしずく”はエンディング・テーマとして登場する。不思議と懐かしいメロディー、そして限りなく青空に近い色彩を持つ彼女の歌声が映画の質感と見事に合っており、しっかりと幕引きの役割を果たしている。今回、彼女は楽曲の完成度にかなりの充実感を抱いているようで、「入道雲の空の下を駆け抜ける主人公2人のように気持ち良い歌をエンディングに響かせることができました!」と嬉しそうな表情を見せる。映画と音楽の幸せな重なり具合は、ぜひ劇場で確認を!


監督/原恵一 声の出演/冨沢風斗、横川貴大、植松夏希、田中直樹、西田尚美、なぎら健壱、ゴリ他 7月28日より東京・シネ・リーブル池袋他、全国公開予定(配給/松竹)

(C)2007 木暮正夫/「河童のクゥと夏休み」制作委員会

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年08月02日 13:00

更新: 2007年08月02日 17:33

ソース: 『bounce』 289号(2007/7/25)

文/桑原 シロー