インタビュー

8otto


 「アレサ(・フランクリン)でも(レッド・)ツェッペリンでも、クラッシュでもストゥージズでも……僕らが好きなアーティストたちに共通してるのって、上手下手がいちばんじゃなくて、瞬間的にどれだけのエネルギーを爆発させるかで勝負してるところなんですよね。その片鱗みたいなものを、本当にわずかでしたが、この4人で初めてスタジオに入った時に感じたんです。すっごい下手クソなんですけど、瞬間瞬間でエラいカッコ良くて。この4人やったらタイトでストイックなバンドができそうやな、って思いましたね」(マエノソノマサキ)。

 小細工は要らない。過剰な装飾も要らない。磨き抜かれたリフと研ぎ澄まされたリズム、青白く燃え上がるメロディーが、ただ、それだけがあればいい――そう言外に告げたデビュー作『we do viberation』でリスナーのドギモを抜いた関西地下シーンの雄が、いよいよメジャー・デビュー・アルバム『Real』をリリースする。プロデューサーは過去作と同じくヨシオカトシカズ。NYでの武者修行中に出会った彼のネームヴァリューもあって、これまでストロークスと頻繁に比較されてきた8ottoだが(ヨシオカはストロークスの『Room On Fire』でエンジニアを務めていた)、彼らが新作で鳴らすのは、より衝動的に、よりワイルドに、より生々しく肉体に訴求する、恐ろしくプリミティヴでダンサブルなロックンロールだ。贅肉を削ぎ落とされて極太の骨が露わになったリズム、鋭いリフを刻みながら熱量を膨張させるギター&ベース、憂いと凄みを増したヴォーカリゼーション。その成長は、他に例を見ないほど著しい。

「ボブ・マーリーにしてもスライ(&ザ・ファミリー・ストーン)にしてもカーティス(・メイフィールド)にしても、バンドの全員が好き勝手に譜面上を遊び回ってるようでいて、実はそれぞれが相手の音をすごくよく聴いていて、それで全体が合わさった時にでっかい一つの音の塊になる感じがすごいなと思って。全員で楽しんで、全員で集中して瞬間瞬間を作っていく緊張感がそこにはあるんですよね。それをめざして、自分らも曲のフロウやグルーヴはすごく大事にしてますね。曲って、向き合えば向き合うほど輝いてくると思うんですよ。同じ曲を何回も演奏することで、〈これしかない〉っていうギター・アレンジやヴォーカル・ラインを見つけられるし、リズム・パターンもスネアが一個から二個になっただけで曲の印象がまったく変わったりする。去年は〈自分らが演っても嘘臭くなってしまいそうやな〉と思って敬遠してたファンクっぽいリズムも、今回のアルバムではすんなりできましたね。去年からライヴを重ねてそれぞれ成長したところがあると思うんで、そういう部分が自然に出たんかな? どの曲も僕らなりにちゃんと突き抜けることができたと思います」(マエノソノ)。

 そうして完成した『Real』は、まぎれもない傑作だ。しかし、偉大なる先人たちへの憧憬と、音楽に対するひたむきさを原動力として前進し続ける彼らにとっては、本作もひとつの通過点にすぎない。

「メンバーの間でもよく話すんですけど、カッコイイ音楽を演る人って、その人自身がカッコ良くないと駄目なんですよ。24時間のうちどれだけ音楽と向き合えるか、なんですよね」(TORA)。

「あと、自分のアイデンティティーをどれだけ詰め込めるか。自分の人間性と向き合って音楽をやってる人のほうがええ音出せると思うし、説得力もあると思う。誰よりも真剣に、自分の音楽を貫き通す――いまもこれからも、ただそれを追求していくだけですね」(マエノソノ)。

PROFILE

8otto
マエノソノマサキ(ドラムス/ヴォーカル)、リョウ(ギター)、ヨシムラセイエイ(ギター)、TORA(ベース)から成る4人組。99年に前身バンドで活動を開始。2004年より現在の編成となり、同時にバンド名を8ottoに改める。同年11月に渡米してライヴ活動を行うなかでヨシオカトシカズと出会う。2006年に再渡米してヨシオカと共にレコーディングを敢行し、同年7月にデビュー・アルバム『we do viberation』をリリース。〈サマソニ〉出演などでも注目を集める。今年に入って、5月にミニ・アルバム『Running PoP'』を発表。タクティールがリミックスした12インチ・シングル『1977 EP』の先行カットを経て、10月10日にメジャー・デビュー・アルバム『Real』(BMG JAPAN)をリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年10月18日 15:00

更新: 2008年03月11日 20:43

ソース: 『bounce』 291号(2007/9/25)

文/土田 真弓