インタビュー

THE RUMBLE STRIPS


  「〈なんでホーンなの?〉って訊かれたら、〈そこにあったから〉と答えるしかないなあ」と、ランブル・ストリップスのチャーリー・ウォーラー(以下同)は半ば困ったような口調で言う。そう、イングランド南西部に位置するタヴィストック出身のこの4人組は、サックスのトム・ゴーバッド(ベースも担当)とトランペットのヘンリー・クラーク(ピアノも担当)から成るブラス隊に、ヴォーカル&ギターのチャーリーとドラムスのマシュー・ウィーラーを交えた変則的な編成のバンド。まあ、4人共通のフェイヴァリットがゴーキーズ・ザイゴティック・マンキだと言うからには、一筋縄でいかない人たちだってことは明白だ。遡れば中学時代にバンド活動をしたり、いっしょに音楽を聴いたりして育った彼らが、各自ロンドンに移り住んでから再会し、3年前にランブル・ストリップスを始動させたとのこと。トムとヘンリーにとっては人生で最初に手にした楽器がホーンで、バンドは自然とホーン主導のサウンドを志向するようになった。ただ、それが曲作りの足枷になるとはまったく考えていないと語る。

 「制限されるのではなく、逆に選択の幅が広いんだと思ってるよ。ホーンを使わないってチョイスもあるし、その代わりにピアノが主役になったり……。だからアレンジの作業がホントに楽しいんだよね。そもそもバンドを始める時は、とりあえず手元にある素材を最大限に活かすべきだと思うんだ。〈こういう音にしよう〉とか目標を掲げて無理に鳴らそうとするよりも自然なサウンドが生まれるし、結果的にはホーンが僕たち独自のカラーにもなった。すごく主張の強い楽器だからね。しかもトムとヘンリーは12歳の頃からいっしょにプレイしているから、コンビとしても息がバッチリ合ってるんだよ」。

 ちなみにチャーリーが弾くのはギターといっても、主にアコギ。つまり、基本的にはアンプラグドなバンドである。が、アコースティックだからといって「メソメソした弾き語りのシンガー・ソングライターみたいなのじゃなくて(笑)」とクギを刺すことも忘れない。先頃お目見えしたファースト・アルバム『Girls And Weather』(プロデューサーは、フラテリスやクークスの作品を手掛けたUKバンド御用達アメリカ人、トニー・ホッファー)に漲るエネルギーは、ハンパじゃない。4人がそれぞれの楽器を汗だくになって掻き鳴らし、叩き、吹き鳴らしている姿が思い浮かぶフィジカル極まりない音に、聴いてるほうもめっぽう熱くなるのだ。

 「みんなでめいっぱいハードにデカイ音を鳴らしてるんだ。例えば音楽的にはそんなに好きじゃないけど、ブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドで、ピアノやサックスが競い合って厚い音の壁を作ってる感じとかも参考にしてるよ。もしかしたら、最近のUKに多いパンク寄りのロック・バンドに反発していたのかもしれないしね」。

 多数派と一線を画しているという点においては、(本人たちは辟易しているが)デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズにしばしば比較される彼らの、ソウルフルで温かいグルーヴも唯一無二だ。

 そして、歓喜に溢れたアップビートな曲に乗せてチャーリーが歌うのは、意外にも〈運に見放されたダメ男の嘆き〉と総括できそうな、ユーモア&ペーソスに満ちた歌詞。「ほら、そうすればウジウジとグチってるようには聞こえないし、それに開き直って自分を笑い飛ばしている感じも好きなんだよね」と言う。そんなコントラストにもぜひ注目してもらいたい。じゃあ何が彼をそんなに悩ませているのかって? それがアルバム・タイトルの〈女の子とお天気〉だ。

 「英国の男たちのお喋りの主要な話題っていえば、まずこのふたつなんだよ。うまくいってる時はハッピーにしてくれて、悪い時は落ち込ませる。どちらもそういう二面性を孕んでいるのさ!」。

PROFILE

ランブル・ストリップス
チャーリー・ウォーラー(ヴォーカル/ギター)、トム・ゴーバッド(サックス/ベース)、ヘンリー・クラーク(トランペット/ピアノ)、マシュー・ウィーラー(ドラムス)から成る4人組。イングランドの南西部にあるタヴィストックで生まれ育った幼馴染み同士が2004年にロンドンで再会し、バンドを結成。すぐに精力的なライヴ活動を開始する。2005年11月にファースト・シングル“Motorcycle”を発表。ラリキン・ラヴの2006年作『The Freedom Spark』への参加やエイミー・ワインハウス“Back To Black”のリミックスを手掛けるなどして話題を集める。このたびファースト・アルバム『Girls And Weather』(Fallout/Island/ユニバーサル)をリリースしたばかり。

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掲載: 2007年11月08日 00:00

更新: 2007年11月08日 17:20

ソース: 『bounce』 292号(2007/10/25)

文/新谷 洋子