インタビュー

monobright

  メガネに真っ白なポロシャツと黒のデニム――ありきたりの書き出しとは思いながらも、ついついそう始めてしまいたくなるぐらい目を惹くルックスで揃えた4人組、monobright。今年3月にインディーでのミニ・アルバム『monobright zero』を発表、7月には“未完成ライオット”でメジャー・デビューを果たした彼らだが、その評判は日増しに高まっている。

「気持ち的には意外とマイペースなんで、まだ実感も何も。マイペースといっても、意気込みみたいなものは人一倍ありますけどね」(桃野陽介)。

 スッキリとまとまったルックスとは裏腹に、彼らが作り出す音楽、その手の内はひと筋縄ではいかないものだ。ひとつは桃野が紡ぎ出す歌詞……。

「モヤモヤはしてるけど、考え方はポジティヴで。そういう自分がそのまま詞になってますね。基本的に僕自身、人として全然しっくりきてないんですよ。しっくりこないというか、ヌケが悪いというか。ストレートに愛を告白するつもりが、良い表現が見つからなくて、〈ヤリたい!〉って言っちゃったみたいな(笑)」(桃野)。

 そして、決して力任せではなく、緩急と音像の変化を織り交ぜながら聴き手を揺さぶってくるポップなメロディーと、ギター・サウンド……。

「世界観に関して、(作り手の桃野に)そんなに詳しく訊かないんですよ。パッと聴こえてくる言葉だったりメロディーとかから勝手にイメージを膨らませて、勝手にギターを弾くっていう感じですかね。同じ感情を共有しながらやるよりも、そういった行程を踏んだほうがポップというか」(松下省伍)。

「自分が〈もう人生終わりだ〉っていうぐらいヒーヒー言ってるのに、鳴ってる音は踊れるぐらいノリノリな感じになってたり、感情とは違う音の表現というか、決してストレートにはならないんですよね。それも考えて考えてひねり出したものっていうより、地でやってしまってるっていうのは現代っ子っぽいなと(笑)。そういう現代っ子気質と60年代や70年代の音楽に対する憧れが入り交じると、こういう音になるっていう」(桃野)。

「昔に比べて、ひとつ枠が外れたというか、型から抜け出した、みたいな感じはしてますね。桃野も好きなようにやってるし、そこで自由度が増したぶん、作り出す世界観もどんどん広がってるんじゃないかと思いますよ」(瀧谷翼)。

 いずれにしても、真っ直ぐ一点張りの単細胞なロック・バンドではないことはたしか。そんな彼らが、このたびインディー/メジャーを通じて初となるフル・アルバム『monobright one』を完成させた。札幌で結成された当時からライヴで頻繁にプレイしてきた楽曲たちによって構成された、現在までの彼らの集大成と呼べる作品だ。

「本当に好きな作品を作るっていう点ではシングルよりも想いが強かったんで、実際に自分が好んで家で聴けるアルバムが出来上がって、すごくうれしいんですよ、いま。46分テープに収まるぐらいの尺で、なおかつおもちゃ箱のようにいろんな楽曲が入り交じっていて、一曲一曲がすごく個性的で。〈こういうアルバムが好き〉とイメージしていたものが出来上がったという気がしています」(桃野)。

 早くも傑作を完成させたmonobright。彼らのまわりで起こるざわめきは、この作品をきっかけに間違いなく大きくなるはずだが、本人たちは至ってクールに意気込みを語る。

「『monobright zero』を出してから、自分らでも本当に早すぎると思うぐらい、あっという間にここに至った感じで。まあ、とりあえず僕らがやることは良いライヴをして、良い曲を作って、っていう基本的なこと、いまはそれをやるしかないんですよね」(桃野)。

「聴いてもらえるとすごくわかると思うんですけど、アルバムには僕らのいろんな面が入っているから、10人聴けば10人の感想があったり、いろんな見方ができるわけですよ。でも耳に入ってくるそのひとつひとつに左右されないというか、とにかく良いライヴをやって良い曲を作ることが出来れば、ってことですよね」(出口博之)。

PROFILE

monobright
桃野陽介(ヴォーカル/ギター)、松下省伍(ギター)、出口博之(ベース)、瀧谷翼(ドラムス)から成る4人組。札幌で桃野と瀧谷が所属していたバンドの解散後、桃野のソロ・プロジェクトとして2006年にスタート。当初はサポート・メンバーだった松下、出口、瀧谷が正式メンバーに加わり、バンドとして新たに結成される。地元を中心に積極的なライヴ活動を展開したのち、今年に入って上京。3月にインディーからミニ・アルバム『monobright zero』をリリース、7月にシングル“未完成ライオット”でメジャー・デビューを果たすと、今夏は数々の大型夏フェス参加で注目を集めるようになる。このたびファースト・アルバム『monobright one』(DefSTAR)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年11月15日 21:00

更新: 2007年11月16日 18:04

ソース: 『bounce』 292号(2007/10/25)

文/久保田 泰平