Leyona
〈自分にはどんな根があったの?〉――ふたたび自身のルーツに立ち返り、〈自分のサウンド〉を模索する旅に出た彼女。ここからLeyonaの第2章が始まる!
忌野清志郎や吾妻光良といった個性的なミュージシャンたちから提供された楽曲を、気の置けない仲間たちとにこやかに料理していく――そんな和気あいあいのムードがふくよかなサウンド作りに結実していた前作『Clappin'』。そのメンバーと新たなステップを踏んだLeyonaは、このたびいっそうハートフルなニュー・アルバム『Off The Lip』を完成させた。6月からリリースを行ってきた一連の配信限定シングル(良曲揃い!)を詰め込んだ本作だが、一枚の作品にまとめるにあたってどんな設計図を描いてたの?と訊いたところ、第一声はこうだった。
「いろんなジャンルの音楽が好きで、そもそも音楽をやっていくうえでジャンルなんて関係ないと思っているんだけど、逆にそうやって自分を縛っていたところがあったかもしれない。ソウルとかブルースとかレゲエとか、ジャンルを気にしないって言っている自分がいちばんキーワードを意識してたのかもしれないって」。
ご存知だとは思うが、これまでLeyonaは幅広い音楽をゴクゴク呑み込みながらガンボな音楽作りを続けてきた。そんな彼女の一言だから、ほぉ~、と思った。そして彼女の現在の志向は、自身の〈ルーツを見つめること〉。なるほど、60年代~70年代サウンドへのストレートな愛情表明がこのアルバムの特徴でもある。例えば、自身の作詞作曲による配信シングル第3弾“Sunshine”。スタックスっぽいホーンの響きが印象的なこのサザン・ソウル・チューンでの歌声を聴くと、あぁ、この〈すっぴん〉ぶりがいいなぁ、と感じてしまう。クリス・ピアースとのコラボレーション曲となったメロウな“Someday”も然り。それにしても、今回はレイドバックの仕方が巧いというか、2007年的な感触を溶け込ませて、レトロに陥りそうなところを回避している。
「そこは今回のテーマだったんですよね。デビューした頃は〈レイドバックこそすべて!〉みたいな考えだったので。で、〈最近の音楽なんて……〉と思ってた。若いって凄いね(笑)。でもそれが私の信じてきた道だった。今回はプロデューサー/アレンジャーの山本タカシとかなり話し合いましたね。メジャーのフィールドで活動するLeyonaが求めるレイドバック感をもっとポップにする、というか、ポピュラリティーを持たせるにはどうしたらいいか。そんなお互いの考えがガッチリ噛み合ったことはすごく大きい」。
それに加えて、バンドに対する安心感がイイ具合に働き、有意義なルーツ探索が行えたのだろう。そうしたら自然とソウル/リズム&ブルース的なテイストが際立った、という点に、またなるほどなぁと思う。でも、これまでの考え方に対する見直しのきっかけはなんだったの?
「デビューして8年。ここまでたくさんの人からいっぱい栄養をもらって育ってきたけど、〈自分の根って……? それはどんな実をつけるの?〉って。それから、外に対してどれだけオープンだったかなぁって考えたりもして。自由な気持ちやイメージがあっても、意外と自分にストッパーをかけてたりする部分もあったから。でも、泣いても笑ってもいま2007年。この時代に音楽をやってる、やれてるんだ、って。解放することで何かを失うわけじゃないんですよね」。
今日もLeyonaはトラヴェリン。きっと明日も明後日もトラヴェリン。いろんな音楽や人との出会いを重ねながら、地面に根を伸ばし続けていくのだろう。そのためには身軽になることが、また足元を見つめ直すことが大事。そういう意識の表れがこのようなルーツ的アプローチを導き出した。「この『Off The Lip』を作ってみて、次は何をやってもきっと大丈夫だっていうアルバムになったと思うんですよね」と彼女ははっきりそう言った。では、本作のテーマは〈初心忘れるべからず〉ってことでいいのかな?
「はい、それが私の座右の銘なんで、まさにそうです」。
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