インタビュー

9mm Parabellum Bullet


  何かを言葉にした途端、たちまち色褪せてしまうことがある。例えば、ここで紹介する9mm Parabellum Bullet。彼らがやっている音楽は、まぎれもないロックだ。しかし、それを紹介しようとロック的な語彙を並べ、もっともらしいことを書き連ねても、唯一無二とも言えるその音のおもしろさは、きっと伝わらない。もちろん、そのバックグラウンドにどういう類の音楽があるのか、想像することはできる。しかし、彼らに限って言えば、そうすることにはそれほど意味がないというか、そんな浅はかな分析は、彼らが轟かす爆音によって、あっという間に木っ端微塵にされてしまうだろう。

 「誰々みたいになりたいという目標は特になかったですね。やっぱり二番煎じはカッコ悪いし。滝(善充)が作ってきたカッコ良い曲を全員で演奏してみたら、現在やっているスタイルの基本が出来た。最初からこんな感じでしたね。その時の曲はいまでも演ってるんですよ」(かみじょうちひろ)。

 「やったらきっとオイシイはずなのに、なぜか他人がやらないことや、他のバンドがビビッて手を出さないようなことをやりたがる、ある意味ズルいバンドなんですよね」(菅原卓郎)。

 2004年の結成以来、メンバー全員が体当たりで臨む激しいライヴ・パフォーマンスによって、彼らはじわじわと支持者を増やし続け、この1~2年、シーンの中でメキメキと頭角を現してきた。洋楽~邦楽問わず、少しでもロックに興味がある人ならば、その長ったらしいバンド名を一度くらいは耳にしたことがあるだろう。そんな勢いは今年に入ってからも止まるどころかますます速度を上げ、10月にリリースしたメジャー・デビュー盤『Discommunication e.p.』のオリコン・チャート初登場6位という成績に結実した(その後、4位まで上昇)。

 「ライヴの盛り上がりとかから見ても、バンドが良い状況なんだということはわかります。ただ、あんまりそういうことは気にしないようにしてます」(菅原)。

 「天狗にならないようにね(笑)」(中村和彦)。

 そんな彼らが11月にリリースしたばかりのファースト・フル・アルバム『Termination』はライヴでの激しい動きを反映しつつ、ディテールにもこだわった爆音の格好良さに加え、歌やメロディーはこちらが予想していた以上にそのあり様を際立たせている。それは、他に例が見当たらないという彼らの存在感をさらに印象付けた形だ。

 「バンドの演奏をパンチがあるものにするのと同じように、メロディーもバリバリに立たせようとしています。ヴォーカリストがいるバンドなんだから、曲には良いメロディーとハモリを乗せたほうがカッコ良いに決まってるんで」(菅原)。

 爆音でリスナーの脳天に衝撃を与え、歌謡曲的とも言えるメロディーと意味深な歌詞で心を鷲掴みにする曲の数々は、菅原が言うように、確かにズルいうえに中毒性も高い。このアルバムをきっかけに彼らの存在がさらにクローズアップされることは間違いないだろう。

 「そういう期待はあまり意識せずに、自分たちが楽しめることをやっていきたい。そうじゃないと、きっと何をしたらいいかわからなくなってしまうと思うんです。それがいちばん楽しくない。目標は楽しむことを続けること。同世代のバンドを巻き込んでいくのか、先輩に挑んで叩きのめされるのかわからないけど、そのつど自分たちが楽しめる方法を考えていきたい」(菅原)。

 〈終結〉〈結果〉を意味するこのアルバムのタイトルには、「いままでの活動に区切りを付けて、ここを新たなスタート地点にして、また、がんばっていきたい」(中村)という想いが込められているという。彼らが踏み出した新たな一歩は、日本のロック・シーンに確かな足跡を残すに違いない。

PROFILE

9mm Parabellum Bullet
菅原卓郎(ヴォーカル/ギター)、滝善充(ギター)、中村和彦(ベース)、かみじょうちひろ(ドラムス)から成る4人組。2004年に横浜で結成され、都内を中心にライヴを展開。派手なアクションによるパフォーマンスが話題を呼ぶ。2005年に『Gjallarhorn』、2006年に『Phantomime』と2枚のミニ・アルバムを残響からリリースした後、2007年5月に『The World e.p.』(限定盤)でメジャー・デビューを果たし、春から夏にかけてはフェスなどに多数出演。10月に発表した35分以上のライヴ音源も収録された『Discommunication e.p.』がヒットを記録するなか、このたびファースト・フル・アルバム『Termination』(EMI Music Japan)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年11月29日 20:00

ソース: 『bounce』 293号(2007/11/25)

文/山口 智男