インタビュー

セカイイチ

4作目にして史上最高に野心的なサウンドをぶつけた意欲作。そんな驚きの進化に裏打ちされた、このバンドの〈真価〉を聴け!


  「自分は昔から〈空〉やなぁって思ってたんですよね。良いと思ったらその色にどんどん染まっていけるんですよ。空の色のように、陽が昇ったら肌色みたいになったり、昼はきれいな青に、沈むときは淡い赤に、夜になると吸い込まれていくような色にって……」――2005年の『淡い赤ときれいな青と』リリース時の本誌インタヴューで、岩崎 慧(ヴォーカル/ギター:以下同)はそう言っていた。なんてことを思い出したのも、彼らのニュー・アルバム『世界で一番嫌いなこと』があまりに劇的な色合いの変化を見せているからで。

 「メジャー・デビューしてからいろんな土地で、いろんな人たちの前でライヴをやるようになって、自分らがやるべきことと求められてることがすごくリンクしていくのがわかっていったんですね。でも、このままじゃいられない……このままがいけないわけではないけど、なんか足踏みしている状態がいちばん好きじゃない。転がり続けながら過去を否定したいところもあるんですよ」。

 4人組の〈ギター・バンド〉であるセカイイチが、今作では打ち込みのトラックなどデジタルな衣を身に纏って、神田朋樹、ASA-CHANG、小谷美紗子、toeらといった個性的なミュージシャンたちと共に、今作の世界観を構築。かつてフィッシュマンズが、TOKYO No.1 SOULSETが、サニーデイ・サービスが放っていたものに近いニュアンスを感じる作品だが、無論、それらをトレースしたものではない。

「なんで同じようにならないかって言うと、僕はそういったアーティストの音楽を全然聴いてなかったから。もちろんいまは好きだし、フィッシュマンズの〈すりガラス感〉みたいなものを作品に入れたいねっていう話はしてたから、そう例えられるのは嬉しいですね」。

 そして、今作を耳にしてつくづく思うのは、そもそもの彼らのチャームである〈並外れたソウルを孕む歌心〉に、一寸たりともブレを感じさせないということ。

「自分の歌がブレるっていうのは想像できなかったんです。骨組みがしっかりしていれば、あとはどんな服を着ても〈このバンドはこのバンド〉だろうと。やっぱりおもしろいことをやるほうがいいし、ずっと前に作った曲だったり、これから作る曲をもっとフレッシュにするために、どんどん好きなことや新しいことをやっていける環境を自分たちで作っていかないと、ってことが今回に繋がったんですよね。〈空〉の話になりますけど、良いと思ったものには染まりたい、〈自分の歌〉があるから染まっていけるんですよ」。

▼セカイイチの作品を紹介。

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掲載: 2007年11月29日 20:00

ソース: 『bounce』 293号(2007/11/25)

文/久保田 泰平