こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

Boom Boom Satellites

常に異端、しかし異端になりすぎることなく己の音楽を突き詰めてきた彼ら。さて、今回撃ち込む次の一手はどうだ!


  ジャスティスからアンディ・ウェザオールのトゥー・ローン・スウォーズメンまで、マクロ的に捉えるとロックに対するダンス・ミュージック・サイドからのアプローチが活性化しつつある昨今。常に収まりの悪さを抱えながら、デビューから10年に渡って自分たちの居場所を開拓し続けてきたBOOM BOOM SATELLITESが、そんな状況とシンクロしつつ進化スピードを加速させ、今回決定打となるニュー・アルバム『EXPOSED』を完成させた。

「今回はストーリー性を持ったアルバムを短い時間で提示したかったんです。ダンス・ミュージックのリズム形態やグルーヴを用いながら、アジテート感があって、なおかつ聴き手との間に予定調和の少ない緊張感があるロックンロール。このアルバムでは踊るっていうよりも、モッシュするような逸脱したテンポ感で一気に崇高な高さに辿り着くような、そういう感覚を求めていましたね」(中野雅之/ベース、プログラミング)。

 ダンス・ミュージックの匿名性に衝撃を受け、90年にBOOM BOOM SATELLITESをスタートさせた彼らは一時、低迷期も経験している。しかし2000年代に入ってそこからの脱却を果たし、その後は尻上がりに調子を上げながら、同時に川島道行の奥底に眠っていたヴォーカリストの資質や記名性を際立たせてきた。本作にあっては、グループ結成以前に聴いていたというラモーンズやジョニー・サンダースといったパンク・ロック、バウハウスやダンス・ソサエティーといったゴシックなニューウェイヴという彼のルーツがアップデートされた形で鮮明に焼き付けられている。

「今回のアルバムはデビュー作の『UMBRA』から始まって、やっとここまで辿り着いたって感じなんですけど、当初はダンス・ミュージックの匿名性やステージにピンスポットを浴びる人間がいないことにおもしろみを感じていたんです。でも気がつけば、世の中的に音楽において言葉が占める比重は高くなってきているし、僕と中野の関係において、ヴォーカリストとして求められるハードルはどんどん高くなってきていますね」(川島道行/ギター、ヴォーカル)。

 ドラムに元SUPERCARの田沢公大と平井直樹、プロダクション・サポートに元walrusの三浦薫を迎えた本作は、全12曲が130~140というファストなBPMを叩き出しながら、42分強で一気に駆け抜ける。しかし、そのアシッドでトランスな昂揚感にある種のアゲインストな感覚を含ませているところが実に彼ららしくもあり、他では体験できない感覚が聴き手を未知なるサウンドスケープへと誘う。

「痛みが伴う感覚というか、歯を食いしばって昇り詰める感じ。やっぱり、そういうリアリティーこそが、僕らの求めているところで。快楽一辺倒な、ある意味逃避としての音楽だけじゃなくて、もっと人生に近い、生々しい音楽をやりたいと思っていて。そうすることで、リスナーの人生と接点を持ちたいんです。このアルバムの昂揚感は、そういう気持ちで作ったものなんですよね」(中野)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年12月06日 21:00

ソース: 『bounce』 293号(2007/11/25)

文/小野田 雄

記事ナビ