インタビュー

THE LAST GOODNIGHT


  〈マルーン5よりマルーン5らしい〉なんて言い方をしたら叱られそうだが、実際にマルーン5のファンはもちろんのこと、ホール&オーツやポリス、ルーニーやダニエル・パウターあたりを聴いてる人たちまで軽く取り込んでしまえそうなのが、このラスト・グッドナイト。ピアノ&ヴォーカルのカーティス・ジョンをメインに据えた6人組だ。ギタリストのアントン・ユラック(以下同)は、自分たちのサウンドをこんなふうに説明する。

 「ソウルフルでエモーショナルだよね。バラード系の曲ではどうしようもないほど死に物狂いだったりするし、とにかくパワフルだと思うな。サウンド的にはジャズの要素もあれば、ポップなこともやっているロック・バンド。そう、俺たちは〈ポップ・ミュージックを作っている!〉って宣言することを恐れないんだ」。

 バンドのデビュー作『Poison Kiss』からは、先行シングル“Picture Of You”がラジオを中心にヒット中。一度聴いたら忘れられない美しいメロディーラインに、とことん真摯な演奏と歌詞、そして説得力のある歌声――繊細さとダイナミズムという両極端を、見事に一曲の中で調和させている。アルバム制作では曲作りにことさら時間を費やした(1年半!)という彼らだが、現在の音楽スタイルを確立するまでには、やはりそれ相応の時間やキャリアが積まれていた。

 「コネチカット州のエンフィールドっていう小さい街の出身なんだ。高校時代の仲間同士で始めたバンドだから、かれこれもう7~8年の付き合いになるかな。以前はレナータって名乗っていたけど、最初のうちは何をやっているのか、自分たちでもよくわかっていなかった……んだろうね。でもいろんな音楽を聴いたり、曲作りをやっていくうちに、次第に自分たちの方向性がはっきりしてきた。俺たちは多くの人々の心に訴えかける普遍的な音楽をやりたいんだ。世界中の人々に共感してもらえる音楽を作りたいと思っている」。

 影響を受けたアーティストとしてU2やブルース・スプリングスティーンから、エアロスミスにニール・ヤング、エラ・フィッツジェラルド、ELOまでを挙げてしまう。まるでランダムに選んでいるかのようだが、アントンに言わせると「つまり俺たちは音楽ファンってこと!」なのだとか。さらに「魂を持った音楽をやりたい」とも続ける。気になるマルーン5との比較に関しては、こう話してくれた。

 「比較されることはけっこう多いけど、それはこういう音楽をやっているロック・バンドが、現在のシーンには少ないからじゃないかな。ラスト・グッドナイトにもジャズのバックグラウンドを持ってるメンバーがいたりするから、彼らと共通している要素がそう聴こえさせるんだろうね。まあ、俺たちも彼らの音楽は大好きだし、比較されるのはとても光栄だよ」と、まったくもって大人の回答だ。しかし、それは自分たちの音楽を信じているからこそ、自信を持っているがゆえの余裕に違いない。

 ところで、カーティス・ジョンのモヒカン頭が気になる人も多いだろう。盲目の父親の影響で音楽に傾倒していったという彼だが、幼少時代にはジャズやブルースを愛する父と「キャッチボールはできなかったが、音楽を通じて強い絆を持つことができた」そう。その絆を今度はオーディエンスと築きたいというだけに、歌に説得力があるのも納得だし、とにかく一直線。どうやらモヒカン頭は伊達ではないようだ。

 「カーティスのモヒカンかい? うん、かなり以前からやってるし、すごく彼らしいスタイルだと思うよ。意気込みを表しているっていうか、彼の性格がよく表れているんじゃないかな(笑)」。

PROFILE

ラスト・グッドナイト
カーティス・ジョン(ヴォーカル/ピアノ)、アントン・ユラック(ギター)、マイケル・ナデュー(ギター)、イーライ・ライス(ピアノ)、レイフ・クリステンセン(ベース)、ラローン“スキータ”マクミリアン(ドラムス)から成るコネチカット出身の6人組。高校時代に母体となるバンド、レナータを結成。2000年にファースト・アルバム『She Walked With Kings』、2003年に2作目『The Other Side Of Earth』をリリース。地元の新聞で〈オリジナル・ベスト・ロック・バンド〉に選ばれるなど、人気を集めていく。2006年、ヴァージンとの契約を機に改名。2007年8月にデビュー・アルバム『Poison Kiss』(Virgin/EMI Music Japan)を発表。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年01月10日 19:00

ソース: 『bounce』 294号(2007/12/25)

文/村上 ひさし