インタビュー

BIGBANG


  「ビッグバンから宇宙が生まれたように、俺たちが音楽界にビッグバンを起こすよう命名されたんだ」(D・ライト:以下同)。

 ヒップホップ~R&Bオリエンテッドな音楽を展開し、デビューから2年でズバ抜けた成功を手にした韓国の5人組、ビッグバン。その大仰な名前から筆者が連想したのはB2Kだったのだが、当たらずとも遠からず。オマリオンを輩出したB2Kがクリス・ストークス率いるティーンR&B工房=TUGの選抜メンバーだったように、全員が20歳以下というビッグバンはYGのスター・システムを通過してきた生え抜きたちなのだ。

 「G・ドラゴンとソルは、小学校6年生の時にプロモ・クリップにキャスティングされた縁でYG入りして、6年ほど練習生として過ごしてきたんだ。他のメンバーたちも1~2年ほどの練習期間でビッグバンの準備をしてきたよ」。

 で、そのYGとは何か。USや日本でもデビューしたセヴンが属することでも知られるYGは、韓国の音楽界にヒップホップ~R&B色を持ち込んできたプロダクション/レーベルで、その首領こそ元ソ・テジ・ワ・アイドゥルのヤン・ヒョンソクである。〈文化大統領〉とも呼ばれたソ・テジを中心に92年にデビュー(96年に解散)したソ・テジ・ワ・アイドゥルとは、USのヒップホップやオルタナ系ロックを採り入れた音楽性を披露しながらも同国初のミリオン・ヒットを叩き出し、演歌中心だった同国の音楽シーンに文字どおりの変革を起こした、いわゆる〈K-Pop〉の始祖ともされるオリジネイターなのだ。説明が長くなったけど……つまり、ビッグバンは韓国の音楽シーンに最初の〈ビッグバン〉を起こした面々の末裔とも言えるわけだ。その正統性を証明するかのように、ビッグバンはソ・テジが自曲のサンプリングを初めて許可した“Crazy Dog”を発表していたりもする。

 「うん。ソ・テジ・ワ・アイドゥルは本当に尊敬する先輩だよ。俺たちが幼い時から聴いてきたアーティストだしね」。

 そうは言いつつも、メンバー全員が直接的な影響を受けているのはUSのアーティストのようで、そのあたりの志向は個々の好きなアーティストを聞くともっとハッキリしてくる。G・ドラゴンは「誰かに憧れているというより、その時によって変わる感じ。最近はジム・クラス・ヒーローズが好きだよ」とイマっぽい発言をしてくれるし、T.O.Pは「小学生の時にビギーを聴いてラップしたいと思った」とルーツを開陳。さらにソルはジョンタ・オースティン、D・ライトはブライアン・マックナイト、V.I.がジャスティン・ティンバーレイクがお気に入りなんだとか。実際に今回の日本デビュー盤『For The World』でもUS流儀のR&B~ヒップホップからハウスまで多様なスタイルを披露しているが、自分たちの特性を「若さと多様性、そして韓国のどのアーティストより流行に敏感なこと」と自信たっぷりにアピールするのにも頷けるクォリティーとヴァラエティーだ。

 「そうしようと思って作ってるわけじゃないけど、完成してみると確かにヴァラエティーがあるね。メンバーの特徴や個性がトラックごとに活きてるってことかな?」。

 ビッグバンの凄いところはそれらがお仕着せではなく、ソングライティングもトラック制作もコリオグラフもすべて自作自演でまかなっている点だろう。

 「G・ドラゴンがメイン・プロデューサーとして、YGのプロデューサーたちと相談しながら楽曲の方向性を決めている。各メンバーの意見や嗜好も考慮しながら、全体的な雰囲気やトラックの方向を導いていくんだ。ソルやT.O.Pも制作に関与してるよ」。

 すでに本国はもちろん東南アジアでも高い人気を誇る彼ら。今後はUS進出も視野に入れつつ、まずは日本でのリリースを楽しみにしているようで、「ビッグバンが〈韓国の音楽〉としてだけじゃなく、ヒップホップやR&Bを好きな若いリスナーが楽しく聴ける音楽として紹介されれば嬉しいよ」とも語ってくれた。日本で韓国のポップ・アーティストが紹介される際には、音楽性そっちのけで〈韓流〉とか〈イケメン〉とか安易なキーワードで語られがちだが……そういう括りによってビッグバンの音楽が届くべき耳に届かないのはもったいない、と釘を刺しておきたい気分だ。

PROFILE

ビッグバン
G・ドラゴン(MC/プロデュース)、ソル(MC/ヴォーカル/ダンス)、T.O.P(MC)、V.I.(ヴォーカル/ダンス)、D・ライト(ヴォーカル)から成る韓国のグループ。小学生ラッパーとしてデビューしたG・ドラゴン、MCバトルで活躍したT.O.Pが集められて結成。2006年8月にシングル『Bigbang First』でデビューを果たすと、9月に『Bigbang Is V.I.P.』、11月に『Bigbang 3』とシングルを連続リリースし、12月のファースト・アルバム『Big Bang Vol.1』がアジア各国でヒットを記録する。2007年に入ってミニ・アルバム『Always』が本国のチャートで首位を獲得。2008年1月1日に日本デビュー作となるミニ・アルバム『For The World』(YG/Village Again)をリリースした。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年01月24日 21:00

ソース: 『bounce』 294号(2007/12/25)

文/出嶌 孝次