インタビュー

AKIHIRO SHOJI

新春特別インタヴュー! ナップスター・ジャパン社長がbounce読者の皆さまに日頃のご愛顧を込めて、ご挨拶代わりに自身の〈No Music, No Life.〉を語る!


写真/Yayoi

 ナップスター・ジャパンの代表取締役社長にしてタワレコの副社長でもある庄司明弘。まずは、自身の音楽原体験について語ってもらおう。

「いちばん最初にヤラれたのは吉田拓郎さんの“結婚しようよ”。それにビートルズの“She Loves You”、ディープ・パープルの“Highway Star”……曲からアーティストに入っていったんだけど、それはラジオと塾の先生から教えてもらった。そういう子供の頃に音楽と出会ったときって、大人になって女の子を好きになっちゃう感じに似てる。理由はわからないけどピピッてきて、気になってしょうがないという。だから、音楽との出会いと、女性との出会いは似ている(笑)。それで、中学生の頃はサッカーをやりながらもギターを弾けば女の子にモテるみたいなところがあって、高校に入るとラグビーを始めた。そうしたら左手の薬指を突き指してしまって。物凄く腫れてギターが弾けなくなったしまって。で、16歳の僕はギターを取るかラグビーを取るかで凄く真剣に悩んだ。それで、何となくラグビーは痛いけど、音楽は痛くないなっていうのもあって音楽を選んだ。そこで本気でギターを弾きはじめて、詞を書くことも始めた。ディープ・パープルとかが好きでハード・ロックのコピーもしていたんだけど、原体験として拓郎さんと井上陽水さんがあるから、詞を書きたいという気持ちがあった。つまり、はっぴいえんど、みたいな。ロックで、日本語で。で、大学に行ってもギタリストや作詞家になれるわけじゃないから、受験をしないという選択肢を取った」。

 そんな庄司少年の波乱万丈の音楽人生がスタートする。

「茨城からいきなり東京に来て――東京は怖いイメージがあったんだけど、〈拓郎さんの歌っているペニーレインなら怖い人はいないだろう〉と思って行ってみたら、ちょうどバイト募集の貼り紙があったので、その喫茶店で働きはじめた。同時に、あるバンドのローディーになって、鹿児島から札幌までツアーを回ったりもしてた。しばらくして、たまたま知り合いを通じて、フォーライフの社長に会って。それでその社長が、俺の書き溜めていた詞をフォーライフの製作陣に配ってくれたら、ふたりから作詞の仕事がきたんだ」。

 その後、プロの作詞家として活躍しつつ、自身で会社を設立して著作権や出版管理、さまざまな企画制作やプロデュース、マネージメント、音楽サイトのプロデュースやデータベース制作などなど、多方面でその能力を発揮してきた彼は、2004年からタワーレコード・グループの経営に参加し、さらにタワレコ副社長、ナップスター社長とその仕事領域を広げてきた。そんな彼はいち音楽ファンとして、また同時に社長としてナップスターをどう捉えているのだろうか。

「〈聴いて、良かったら、買う〉という俺のなかの3ステップは永遠に変わらないと思っていて。ただ、〈聴いて〉が昔は友だちから借りるかラジオで聴く、レコード屋の試聴で聴くくらいしかなかったのが、いまはネットで聴くとか知らない人から教えてもらうとか機会が広がってきた。だから、ナップスターをそうした〈聴く機会の選択肢〉にしてもらえればと思う。〈良かったら〉という基準だけは誰も変えられないし、良かったら良かったということ。それで〈買う〉は、CDというパッケージされたものに¥3,000払うか、配信で1曲¥150払うか、ナップスターみたいにまとめて¥2,000くらい払うか、その支払い方にもヴァリエーションがある。聴く機会と支払いのヴァリエーションが増えているということは、全体的に見ると音楽ファンにとって凄く良いことだと思う」。

 最後に、社長自身が思い描く〈ナップスターのある音楽生活〉の提案を聞いてみよう。

「〈一家に1ナップスター〉というのを提案したいと思ってる。1契約(アカウント)で3台のPCまで使えるから、例えばお父さんが入っていれば息子さんや娘さんも使える。一家で¥1,980。月額制という意味では、NHKや新聞と同じようなものだから。子供は自分の部屋のPCでナップスターが使える。そうすると家族で共通の会話もできるし。月に一度、家族の誰かがタワレコに行ってbounceを持って帰ってきて、家でナップスターをやりながら〈これ知ってるか?〉みたいな。お父さんは自分の持っている古い音楽の知識から言うだろうし、子供は〈じゃあ、お父さんこれは知ってる?〉みたいな話になったらいいな。それに、〈ナップスターに入っとくか!〉って言ってくれるお父さんはカッコイイんじゃないかな。子供は、〈お父さんに払ってもらえばいいか〉みたいな(笑)。スピーカーを繋げればみんなでリヴィングでも聴けるし。やっぱり450万曲聴き放題って凄い、ちょっとした図書館くらいあるからね」。
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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年01月31日 20:00

更新: 2008年01月31日 20:11

ソース: 『bounce』 295号(2008/1/25)

文/ダイサク・ジョビン