インタビュー

sleepy.ab

これまでの足跡を辿って作り上げた〈ニュー・アルバム〉。〈第2期sleepy.ab〉のスタートを感じさせる成長ぶりに注目です!


 静かなる熱情とファンタジックな叙情を繊細なギター・ロックに込める、北海道で生まれた特異なバンド、sleepy.ab(スリーピー)。このたび発表された『archive』は、結成から約5年の足跡を、過去曲の再録やライヴ音源、さらに新曲を交えて構築した〈ニュー・アルバム〉だ。

「昔の曲も、ライヴをやることで成長してると思うんです。どんどん肉が削ぎ落とされて、裸のままでも見せられる自信が付いた。なのでもう一回録ってみたいなと思ってたんです。〈アーカイヴ〉として自分たちの足跡を辿ることで、次の段階へステップアップしたい。第2期sleepy.abというところに行きたいんです」(成山剛、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 1~2作目では、レディオヘッドなど先鋭的なサウンド志向を持つUKロックとの相似性を語られることが多かった。その影響下から抜け出し、バンドがより広い世界へと飛び出してゆく鮮やかな変化の過程が、この『archive』を聴き進めるとすべてわかる。

「セカンド・アルバムをリリースした時に、音楽的にすごくステップアップしたつもりだったんですけど、思ったほどの評価は得られなかったんです。そこで模索してた時に出来たのが〈日常のなかでどのように一歩を踏み出すか?〉ということを書いた“メロディ”なんです。その曲をライヴでやったら、お客さんとの繋がりを突然感じるようになって。それまではお客さんが〈遠くで見ている〉、みたいな印象だったのが、初めてそこで〈届ける〉という感動を知りましたね」。

 新曲は2曲。ドリーミーでメロディアスな要素を活かした“ねむろ”が従来路線の完成形とするならば、クールなエレクトロニカ風のリズムと、温かい人間の体温とを対比させたかのような“雪中花”は、第2期sleepy.abの始まりの曲だ。

「“雪中花”を作って、新鮮な気分になれましたね。打ち込みとドラムをミックスするやり方とか、歌的にはゆったりしてるんですけど、スピード感を損なわずに作れたこととか。これまでずっと〈作って壊して〉という作業なんですが、次は順番的に言うと〈新しいものを作る〉時期なのかも。何をやってもアリ、という感覚でいます」。

 これからも札幌を離れず、「みんながsleepy.abを聴くためにこの街に来てくれること」を目標にして活動を続けたいと言う。tacicaやサカナクションなど、静かに、しかし着実に注目を集めている〈北海道発の音楽〉の未来において、彼らの存在が持つ意味は非常に重要である。

▼sleepy.abの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年02月21日 18:00

ソース: 『bounce』 295号(2008/1/25)

文/宮本 英夫