インタビュー

mudy on the 昨晩

衝動を変拍子にのせて爆発させる、オルタナティヴなインスト・バンド登場!

  mudy on the 昨晩。一度耳にしたら忘れられないバンド名を持つ彼らは、teや9mm Parabellum Bulletを輩出している注目レーベル・残響レコードのニューカマーだ。全員が現役大学生の5人組。バンド・サークル内で〈なんかやろうぜ!〉と集まってみたら、ギターが3人いたという。

 「(ギターが)2本よりは3本の方が、いろんなことがやれるかなと思って。ただ、インストってことだけは最初から決めてました。たくさんギターを弾きたかったから(笑)。(音を出す際の)3人の住み分けは基本的にないつもりですが、新曲をはじめに合わせる段階では、自分がバッキング、メロっぽい音を山川、ピック・スクラッチとかその他を森がギャーッと(笑)やることが多いです。それでしっくり来なかったら、違うところにまわってみたり」(フルサワヒロカズ、ギター)。

 そんなフルサワの言葉どおり、彼らのファースト・ミニ・アルバム『VOI』は、変拍子の連続でリスナーの予測を鮮やかに裏切るリズム隊と、エモーショナルに雄叫びを上げ、叙情的に歌い、傍若無人に暴れまわるトリプル・ギターがガッチリと絡み合い、極太のうねりを生み出すという驚異的にアグレッシヴな内容だ。ソリッドなリフやメランコリックなフレーズ、カオティックな轟音を滑らかに組み立てる緻密さはドン・キャバレロをはじめとしたUSポスト~マス・ロック勢を想像させるが、難解なバックヤードを微塵も感じさせず、野性味あふれる衝動が前面に出ているところが彼らの最大の武器。それは、メインストリームに堂々と斬り込めるだけのキャッチーさに直結している。

  「いまのところロックをやってるつもりなので、どれだけ〈バシン!〉とくるリフを繋げられるか、っていうのを考えながら作ってますね。大体僕がリフや構成を持っていって、とりあえず自分のなかのイメージは何も言わずに5人でやってみる。みんなバックボーンが違うので、どんな風になるかな?って感じで。それで、最初のイメージとあまりにも離れてるときは、ちょっと説明が入ります」(フルサワ)。

 「なんか、変なコード持ってくるんですよね(笑)」(山川洋平、ギター)。

 「たとえ話もすごくあいまいで(笑)。〈遅くないけど重い感じ〉って言われて弾いても、〈違う〉ってダメ出しをされたり(笑)。で、〈最後は駆け抜ける〉とか言われても……もう、わからん!と」(森ワティフォ、ギター)。

 「漠然としたイメージで作ってるんで……。“POLICE”とかは、リフ一個だけでどんだけ広げられるかな、と思ってやってました。“ヒズミ・タカコ”もリフからですね。〈コントーションズ(70年代後半に発生したNYノーウェイヴ・シーンの代表的バンド)、カッコイイな〉って思いながらそのときにあったリフをスタジオに持っていったら、ああなりました(笑)」。(フルサワ)。

 フルサワがブレーンとは言え、5人全員の個性が入り乱れてこそ生まれるポップな質感。ちなみにフルサワ以外の4人のフェイヴァリットは「キング・クリムゾンとかイエスとかがすごい好き。パンクとか小沢健二とかも好きです」(森)、「Hi-STANDARDとかナンバーガールとか54-71とか、すごいカッコイイと思います」(朴木祐貴、ベース)、「僕はメタルが元々……じゃなくて、いまも好きです(笑)。重くてうるさいのがいい」(伊藤浩平、ドラム)、「Mr.Childrenとかの、J-POPな……ミーハーな感じが好きですね(笑)」(山川)ということだが、その嗜好はすべて、漏れなく本作に溶け込んでいる。

 「ちょっと話がずれちゃうんですけど、僕らって、いままでライヴのときにいろんなジャンルのバンドと当てられたりしてるんですね。アングラの方に振り切れてるバンドもあれば、すごいポップなバンドもあって。でも、僕らはそのどちらも好きだし、逆にどちらとも一緒にいられるっていうのは、すごく面白いことなのかなって思ってます」(フルサワ)。

 踊ってもよし、暴れてもよし、じっくり聴いてもよし。攻めの姿勢を崩すことなく、リスナーによってその作用を大胆に変化させる――それが、mudy on the 昨晩のサウンドである。

mudy on the 昨晩 『VOI』
1. パウゼ(試聴する♪
2. ヒズミ・タカコ(試聴する♪
3. ニュータイプ理論
4. POLICE
5. Kau's(試聴する♪
6. 205

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2008年03月27日 20:00

文/土田 真弓