インタビュー

多和田えみ

沖縄から期待のシンガーが登場。みずからの〈魂〉を一滴残らず注いだ、〈無限大〉の可能性を秘めたデビュー作が眩しい!


  日本の音楽シーンにまた一人、注目すべき歌姫が現れた。その名も多和田えみ。沖縄に生まれた彼女は高校卒業後、語学留学先のカナダで音楽に目覚め、帰国後は地元で音楽を学びながらライヴ活動を展開する。2007年5月に沖縄限定でリリースしたデビュー・シングル“ネガイノソラ”が同地のインディー・チャートで第1位を記録、東京で行った初のワンマン・ライヴを機にレーベル各社が争奪戦を繰り広げるなど、その実力は折り紙付きだ。そして今年4月、本人も「去年のお正月には、まさか1年後にこうなるとは思ってもいませんでした(笑)」と話すほどの早さでファースト・ミニ・アルバム『∞infinity∞』をリリースした。

「デビュー作だから、というわけじゃないんですけど、今回特にこだわったのは歌に〈魂〉を込めること。思い起こせば、自分が誰かの歌に心を打たれる瞬間って、その人の〈魂〉が見えた瞬間だと思うんです。マーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイといったソウル・シンガーが大好きなんですけど、彼らの歌にも〈魂〉がこもってますよね。今回のアルバムには、いまの私にある〈魂〉や〈感情〉を、一滴残らず注ぎ込みました」。

 そんな彼女の真摯な思いに応えるかのように、本作には冨田恵一や森俊也(元ROCKING TIME)ら、新人としては十分すぎる豪華クリエイター陣が参加している。

「以前から大ファンだった冨田さんとの作業は、ただただ感動でした(笑)。参加してくださった“Music Box”という曲はブラジリアンなリズムを採り入れて、冨田さんも凄く新鮮な仕上がりになったとおっしゃってくださいました。“ゆらゆら”はコンピ『琉球ラヴァーズロック』用に制作した風味堂さんのカヴァー曲なんですが、森さんのレゲエ・アレンジがとてもピースフルで。レゲエは初めて歌ったんですが、めちゃ気持ち良くて、自分でも新しい発見でした」。

 他にも、COLDFEETが楽曲提供した“Naturally”やYANAGIMANによってR&B調のバラードへと生まれ変わった彼女の処女作“CAN'T REACH”など、一括りにはできないさまざまなスタイルの曲をパッケージ。そこには「音楽って〈無限大〉だから、聴いてくれた人が自由にジャンル分けしてほしい」という彼女の意志が込められている。

「そのためにも今回は生音にこだわったんです。人間の演奏した音には温もりがあるし、みんなの〈魂〉が入るし、それによって世界も広がると思って。とはいえ結局は生音好きの人たちが集まっただけなんですけどね(笑)」。

 そうして音のひとつひとつを積み重ねた結果、目の前で「音楽が膨らんでいく瞬間を見た」という一枚が仕上がったと同時に、彼女の夢もまたひとつ膨らんだ。

「このミニ・アルバムの曲をライヴでお客さんといっしょに歌いたいんです。みんなで声を合わせて、ひとつになれたら最高ですね」。

▼多和田えみが参加したコンピを紹介。

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掲載: 2008年05月01日 19:00

ソース: 『bounce』 298号(2008/4/25)

文/片貝 久美子