こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

LIL MAMA


  「私はリリックで真実を語ってるし、世界中のキッズの声(Voice Of The Young People)を代弁してるのよ。多くの人は自分の感情を表現することができないし、それを言葉で言い表せないの。外ではキッズはいつも誰かに〈こういうことを考えるべきだ〉とか〈こういうことを言うべきだ〉ってコントロールされてるんだけど、家に帰って自分の部屋に入れば、自分自身に語りかけたり、友達に電話して自分の言いたいことを話すでしょ。若い人たちが自分の思ってることを世間に伝えるのは難しいの」。

 この〈キッズの声を代弁する〉という大役をファースト・アルバム『VYP : Voice Of The Young People』で買って出たのが、弱冠18歳のフィメール・ラッパー、リル・ママだ。昨年の夏にデビュー・シングルの“Lip Gloss”が世界的に大ブレイク。メインストリームに久々に登場した、お色気ではなく実力で勝負する女性ラッパーにいま多くの人が期待を寄せている。アルバムを聴いてまず耳に残るのは、その多彩なラップ・スタイルだろう。18歳にしてラップ歴8年だというリル・ママは、自身が影響を受けてきたアーティストについてこう語る。

 「好きだったのは、MCライト、TLC、ミッシー・エリオット……。TLCの“Waterfalls”は凄く感動的だと思う。ポエトリーとラップの融合って、あの曲のことよね。ミッシーはラップとダンスをミックスしたし、彼女のプロモ・クリップってダンサーたちの踊りとか本当にクレイジーじゃない? 私もああいうことをやりたいって思ったわ。あと、MCライトの“Lyte As A Rock”は、ラップの凄くハードなところが好き。彼女の女の子っぽくないところがカッコイイ!」。

 そのように世代も音楽性も異なる顔ぶれに影響されてきた彼女らしく、『VYP : Voice Of The Young People』の制作陣には、クール&ドレーやスコット・ストーチ、さらにはポップ/ロック仕事からアーバン系までをこなすDrルーク、前述の“Lip Gloss”をプロデュースしたジェイムズ・チェンバース(ナッピー・ルーツのヒット“Awnaw”を手掛けた人)など、実にさまざまなタイプのプロデューサーが名を連ねている。彼らとの仕事を含め、アルバムの制作を通じて学んだことは多かったようだ。

 「知らない人と仕事を始める時は自分をオープンにして、相手に自分を理解してもらうようにしたわ。何をしたらいいのか自分でもわからないアーティストとばかり仕事をしてきて、主導権を握ることに慣れてるプロデューサーたちもいるの。彼らは私みたいなアーティストには慣れてないのよ。だから、〈自分は本物のアーティストで、こんなことをしたい〉っていう意志をどうやってわかってもらえばいいのかを学んだ。で、理解してもらうことによって、本当に自分のやりたいものが完成するってことも確信できたわ」。

 現在、クリス・ブラウンとT・ペインというジャイヴの2大スターをフィーチャーした“Shawty Get Loose”が大ヒット中。同曲のプロモ・クリップでは、そのダンス・スキルも思い切り披露している。

 「クリスといっしょにダンスしたり、撮影は楽しかったわ! みんな忙しいからスケジュールが合わなくて、あの曲は最初いっしょにはスタジオ入りできなかったの。でも、プロモ・クリップを撮ったら凄く意気投合して、みんなで曲もレコーディングし直したのよ。映像を観れば私たちがエキサイトしてるのもわかると思うわ!」。

 さて、ラップや歌だけでなく、ダンスまでこなす新世代のエンターテイナー、リル・ママがめざす将来像とは?

 「素晴らしいアルバムを出して成功すること。若い子たちに聴いてもらいたいし、親たちにも聴いてほしいし、時代が変わっても聴いてもらえるクラシックなアルバムを作りたい。〈リル・ママの言ってることに耳を傾けてみなさい〉みたいに言われたいわね。ポジティヴでなおかつ楽しい音楽をやりたいの。あと、グラミー賞も獲りたいわ!」。

PROFILE

リル・ママ
89年生まれ、NYはハーレム出身のラッパー。ブルックリンで育ち、幼い頃からダンスやラップを通じてヒップホップに親しむ。10代になるとデビューをめざして楽曲制作を行うようになり、2006年にレコーディングした“Lip Gloss”がDJイナフのオンエアをきっかけにラジオ・ヒットし、2007年初頭にジャイヴと契約。アヴリル・ラヴィーン“Girlfriend(Dr. Luke Mix)”に参加して話題を集め、正式リリースされた“Lip Gloss”は全米10位のヒットを記録する。その後はメアリーJ・ブライジ“Just Fine(Remix)”などに客演。今年に入って、“Shawty Get Loose”がヒットするなか、ファースト・アルバム『VYP : Voice Of The Young People』(Jive/BMG JAPAN)を5月7日にリリースした。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年05月22日 03:00

更新: 2008年05月22日 18:21

ソース: 『bounce』 298号(2008/4/25)

文/松田 敦子