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インタビュー

CAZALS


  NME誌で〈もっとも革新的なUKギター・ロック・バンド〉と紹介され、ヨーロッパのダンス・ミュージック・シーンをリードするキツネのレーベル・オーナーがみずから契約交渉に臨んだとの逸話も持つ5人組、カザルスがついにファースト・アルバム『What Of Our Future』を完成させた。バンド結成直後にベイビーシャンブルズとのツアーも経験し、昨年にはダフト・パンクの前座として初来日! ダフト・パンク目当てに遊びに来たクラブ・キッズを、スタイリッシュなギター・サウンドとクールなルックス(フロントマンのフィルはディオール・オムのショウにもモデル出演しているほどイケメン!)で熱狂させ、〈革新的〉たる所以を見せつけてくれたことも記憶に新しい。そんな彼らは結成当初、同じアパートで共同生活をしていたそうで……なるほど、だからこそ結束力の強さを音の端々から感じることができるのだ。しかし、意外にもメンバー個々の音楽趣味はバラバラだという。

 「それぞれが違った音楽のバックグラウンドを持っているから、〈カザルスのルーツはコレです!〉って明言できないんだよね。ホントにいろんな音楽を聴いてきたんだ。僕自身のお気に入りは、レディオヘッドやフェニックス、ダフト・パンク、ストロークス。自分たちがめざしているサウンドを強いて表現するなら、〈ダフト・パンクにプロデュースされたストロークスみたいな感じだな〉ってベースのマーティンとよく話してるよ」(ダニエル:以下同)。

 2004年にロンドンで結成された彼らだが、今作のレコーディングが行われたのはパリ。スタジオに立ち寄ったフェニックスと運悪く会えなかったことを、ダニエルはいまだに悔しがっているようだ。さておき、そもそもどのような経緯でキツネから作品をリリースすることになったのだろうか。

 「オーナーのジルダが日本にいた時、僕たちの“Poor Innocent Boys”という曲を誰かから聴かされたみたいで、その時に〈この曲を『Kitsune Maison 2』に入れたい〉と思ったらしいよ。で、〈MySpace〉を通じて彼から直接オファーがきたんだ。僕たちは〈もちろんOKさ!〉って即答したよ。そしたら今度は〈君たちはどこか他のレーベルと契約してるか?〉って訊いてきたんだ。まだどこともサインしてなかったこともあって、ジルダが契約を結んでくれたんだよ。光栄なことだよね、キツネは本当に素晴らしいレーベルだから。彼らはデジタリズムで大成功を収めてたし、さらに広いオーディエンス、特に日本に僕たちのことを広めてくれると確信してるよ」。

 こうして〈MySpace〉世代のニューヒーローがロンドン発、パリ経由でここ日本にも本格上陸したわけだ。彼らのサウンドにはレイザーライトやエイト・レッグスとも比肩するロックンロールの魔法がギュッと詰まっていて、その出現はマキシモ・パークが〈ワープ初のロック・バンド〉としてデビューを飾った時と同様の、いやそれ以上の衝撃と感動を聴く者にもたらしてくれることだろう。

 「僕たちには引退するまでに達成したい目標が3つあるんだ。まずはアルバムを作ること。次がダフト・パンクとツアーすることだった。そして最後はストロークスとツアーを回る。3つのうち2つはもう達成できたわけだから、かなり順調にきていると言えるんじゃないかな」。

 ダンス・ロックが盛り上がりを見せる2008年のブライテスト・ホープは、ダンス・レーベルのオーナーが惚れ込んだ超正統派のロック・バンド! ちょっと不思議な気もするが、カザルスの躍進をきっかけにクラブ・ミュージック好きの間でストレートなロック・サウンドが広まることは間違いない。そしてその偉業を成し遂げた時、むしろストロークスのほうが彼らの前座に抜擢される……なんてことも、大いにありえる気がするぞ!

PROFILE

カザルス
フィル(ヴォーカル)、ダニエル(ギター)、ルカ(ギター)、マーティン(ベース)、ウォーレン(ドラムス)から成る5人組。2004年にUKはロンドンで結成。ほどなくして幼馴染みのピート・ドハーティに誘われ、ベイビーシャンブルズのツアー・サポートを務める。2005年7月に1234からファースト・シングル“Poor Innocent Boys”を発表。同曲がキツネのレーベル・オーナーであるジルダの耳に留まり、コンピ『Kitsune Maison 2』に収録される。2007年12月にダフト・パンク主催のイヴェント〈Da Funk Fes〉で初来日公演を行ってさらなる注目を集めるなか、このたびファースト・アルバム『What Of Our Future』(Kitsune/TRAFFIC)を日本先行でリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年06月12日 21:00

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/白神 篤史