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インタビュー

LOW IQ 01

久々のフル・アルバムは、いろいろなものを詰め込みながらもストレートな剛速球のイッチャン節。兄貴が本当のロックを聴かせるぜ!


 日本のパンク・ロック界が誇る才人・LOW IQ 01が、レーベル移籍を挿んで約4年ぶりに発表した通算4枚目のフル・アルバム『MASTER LOW FOR...』。〈娯楽大作ですね。楽しみました〉と素直な感想を伝えると、ソロ活動を始めた約10年前とまったく変わらない印象の晴れやかな笑顔と陽気な言葉が返ってきた。

「そう言ってもらえる作品って、なかなか最近ないんじゃないですか? できれば僕もシリアスな曲を書いてみたいとは思いますけど、性格的な問題なんですかね(笑)。出せないものを無理に出してもしょうがない。だったら自分が出せる音は?というと、陽気で能天気というのがいちばん出しやすいんですね。僕は〈キャッチー〉という言葉が好きなんですよ」。

 本作には、レーベル移籍直後の昨年1月にリリースされたミニ・アルバム『THAT'S THE WAY IT IS』の制作途中からすでにプランを練っていたという全11曲を収録。2004年発表の前作『MASTER LOW 3』と並べて聴くと、曲のスピード感と演奏のハジケっぷりの違いは一聴瞭然だ。

「『MASTER LOW 3』のほうがちょっと大人っぽいかなと思うし、こっちのほうが若返った……って自分で言うのは気持ち悪いけど(笑)。すごくフレッシュな音で、気持ちもそんな感じなんですよね。いままで散々フォークとかカーブを投げることにこだわってきたから、あえて今回は150kmのストレートを投げてみようと思ったのが、こうなったのかな」。

 ヴァラエティー豊かな楽曲のスタイルを一言でまとめれば、〈ベスト・オブ・LOW IQ 01〉。目まぐるしいリズム・チェンジのなかで、ヘヴィーなギターの質感はハードコアだが、煌めくキーボードとポップなメロディーが耳に心地良い冒頭曲“This 1 is 4 You”。4~5曲分のアイデアを1曲に詰め込んだような贅沢な味わいで、しなやかな演奏がプログレ並みに凝りまくった展開をスカッと爽やかに聴かせてくれる。

「これとこれを引っ付けたらどうなるんだろう?とか、イイ具合の法則を編み出すのがおもしろいんですよ。こうきたら次はこうきてほしいとか、そこはひらめきなんですけど。ライヴの時などにメンバーには〈こうこないでしょ、普通は〉って言われます(笑)。でもそれが快感なんですよね」。

 その後は痛快メロコア、ライヴで大合唱必至のパワー・ポップ、洗練されたスカ、ブルーアイド・ソウル風味のグルーヴ・ロック、若さ溢れるギター・ポップ、サイケデリックなハードコア、攻撃的なジャズ・パンクなどが入り乱れ、そして鍵盤ハーモニカのゆるい音色と共に4ビートでのんびりお散歩気分な可愛らしいインスト“Je dis, et reve”まで。〈AIR JAM〉世代だろうが、ティーンエイジャーだろうがリスナーの世代は限定しないはず。大らかな楽しさに溢れた最上質なロック・アルバムがここにある。

「リスナーを選ばないというのは、僕がジャンルを選んでいないのと同じことだと思うんですよ。あれもやりたいこれもやりたいって、〈節操がない〉って言われたら終わりなんですけど、でもホントにやりたいことだし、好きなことだし。こんな人に聴いてもらいたいというのは別にないけど、ひとつだけ言いたいのは、この音楽をわかってもらいたいですね。いまいっぱい音楽が氾濫しているなか、こういうのがロックと言うんだって。そういう説得力のあるアルバムだと思います」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年06月19日 00:00

更新: 2008年06月19日 17:32

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/宮本 英夫

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