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インタビュー

SANDI THOM

自由な感性で音楽と向き合った、最強のポップ・アルバム!


  いつになく女性アーティストが元気なUKシーンにおいても、サンディ・トムと言えばご存知、素朴で古風な音楽性の持ち主ながら自宅からライヴをネット中継するという大胆な試みで注目を集め、ファースト・アルバム『Smile... It Confuses People』を全英チャート1位に放り込んだ変り種のシンガー・ソングライターだ。そんなDIY志向は待望のニュー・アルバム『Pink & The Lily』にも引き継がれており、主なレコーディング場所は自宅の一部を改築したスタジオ。前作と同様に、バンド・メンバーにして同居人でもあるジェイク・フィールド(キーボード)とダンカン・トンプソン(ドラムス)を交えて本作を仕上げたという。

「長い時間をいっしょに過ごしてる3人だから、絶対に特別なものが生まれると思うの。お互いを知り尽くしていて、遠慮がないでしょ(笑)。それに自宅なら時計を気にする必要もないし、慣れた楽器や機材を使えるし、クリエイティヴな主導権を握れるのよ」。

 とはいえ、曲によってはホーンやストリングスを導入して音をより厚く作り込み、サンディらしいフォーキーなロックに加えてカントリーやソウルの影響もプラス。

「どの曲も書いた当時はギターとメロディーだけだったから最終的な仕上がりとはまったく違って、曲調は詞の内容に左右されるの」と彼女は説明する。

「例えば、傷ついた心を描く“Wounded Hearts”をカントリー風にアレンジしたのは、その手の詞がカントリーの定番だから。ツアー生活に根差した“Shape I'm In”は、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルがやりそうなノリのいい曲でしょ? そういうアプローチで音を作っているのよ」。

 つまりこのようにサウンドの幅が広がったのも、社会批評から恋愛まで多彩な題材を詞で網羅しているからこそ。ちなみに〈Pink & The Lily〉というタイトルは、ロンドン郊外にある有名なパブの初代オーナー夫婦の名前にちなんだものだ。自分たちの意志を貫いて幸せな人生を送った二人に敬意を表して、「他人に惑わされずに自分が正しいと思う道を進もう」との願いを込めたのだとか。10代前半からバンド活動に勤しんで海外をバスキングしながら放浪し、そしてライヴのネット中継に至るまで、まさに自由奔放な音楽人生を送ってきたサンディだけに、説得力満々のメッセージと言えるんじゃないだろうか?

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年06月19日 04:00

更新: 2008年06月19日 17:04

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/新谷 洋子