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インタビュー

The Verve

約11年ぶりとなるニュー・アルバム『Forth』を携えて、UKロック・シーンのカリスマが帰還した。再生? とんでもない。それどころか、大いなる進化を遂げた彼らが深いサイケデリアの底で見たものは、新たなるソウル・ミュージックの誕生であった――。

  それは歴史的な瞬間だった。二度目の解散の報から約9年。そして、突然の復活宣言から約1年――。筆者を含め、一体どれほどの日本のファンがこの日を待ち望んでいたことだろう? 2008年8月9日、千葉・幕張メッセ。〈SUMMER SONIC 08〉のメイン・ステージを埋め尽くした大観衆を前に、初来日を果たした4人が挨拶代わりに放った1曲は “This Is Music” であった。

 「“This is Music”は、ショウのオープニングとしては最高の曲さ。〈丘の上から街を見下ろすと、数多くの光が煌めいている。だけど、自分がどういう存在なのか、自分にはどんな可能性があるのか、そしてどんな未来が待ち受けているのかについては何もわからない。でもだからこそ、自分で自分の運命を変えることができるんだ〉っていうことを歌っている曲で……。まあ、ほかにもさまざまな意味があるんだけど、いずれにしても〈これこそが音楽だ〉って力強く断言している曲だし、ショウに対するヴァーヴの姿勢を宣言するような曲でもあるからね。オープニング・ソングとしては最適なのさ」(リチャード・アシュクロフト、ヴォーカル/ギター:以下同)。

  〈これこそが音楽だ〉という高らかな宣言と共に幕を開けたステージでは、約11年ぶりにリリースされたニュー・アルバム『Forth』からも2曲を披露。混沌の淵から湧き上がる太いグルーヴに引きずり込まれずにはいられない漆黒のサイケデリック・ナンバー“Sit And Wonder”と、ループするコーラスがやはりドラッギーな酩酊/恍惚感を誘う“Love Is Noise”――先行シングルともなった後者について、リチャードはこう語る。

 「〈Love Is Noise〉っていうのは、〈石と薔薇〉みたいなものさ。相反するものに凄く惹かれるんだ。音楽史を通じて、人は完璧なラヴソングを書こうとしてきた。愛情に関わるさまざまな感情についても歌ってきている。俺にとっての愛はノイズであり、サウンドであり、痛みなんだけど、この曲のアイデアは、ウィリアム・ブレイクの詩「エルサレム」から得たんだ。冒頭の何行かの歌詞も「エルサレム」から派生的に生まれたものさ。キリストの再臨を想像した曲なんだよ。イギリスに現れたキリストは、きっと中国製の靴を履いて、つまらないショッピング・モール――つまり、俺らがいま住まう、単調でちっぽけな世界を彷徨するだろう。俺ももちろん例外ではない。このつまらない世界の一部だ。俺にもみんなと同じように物欲があるからな。ただ、歌詞の解釈なんてどうでもいいんだ。単に曲を〈ウ・ウ~、ウ・ウ~、ウ~〉と楽しんでほしい。それが重要さ。ほかのことは忘れてしまってもいい。このヴォーカル・ループでは、ヴォコーダーを使ってるんだ。このループを考えついた瞬間から、この曲は最高に良い出来になると確信したよ」。

 そして、ようやく全貌を表した最新アルバム。『Forth』というタイトルは、〈先へ、前方へ〉という意味を示している。

 「最初は〈4作目〉ということで〈Four〉と名付けようと思ったんだけど、既にそのタイトルを使っているバンドがいたから、〈Forth〉にしたんだ。今回ヴァーヴを再結成させた理由は、実際のところバンドはまだ存続しているのに、このまま死なせてしまうのは少し馬鹿げているんじゃないかと思ったから。“Bitter Sweet Symphony”をはじめ、ほかにも俺らのいろんな曲が、いまでも世界中でプレイされているんだからね。ヴァーヴはまだ生きているんだから、また一緒に音楽を作ろうと思った。タイトルに意味があるとしたら、俺らはみな前進しているってことかな? 過去を忘れるっていうことじゃなく、過去をきちんとリスペクトしながら、人として進化していこうっていうことなんだ。はたから見てどうかはわからないけど、俺自身は常に進化していると思ってるよ」。

  原点に立ち帰るかのごとく、ジャムにジャムを重ねて生み出されたという本作。随所でぽっかりと口を開けるダークなサイケデリアは確かに初期の作品を思い出させるが、その奥に広がる音世界は、リチャードの言葉を借りれば〈過去をリスペクトしながらも、きっちりと進化を遂げた〉もの。壮大なストリングスが震えるような感動を呼ぶ“Rather Be”“I See Houses”やドリーミーかつジェントルなアレンジが印象的な“Judas”、(いい意味で)ヴェテランらしからぬ衝動を増幅させながら8分超をアグレッシヴに攻めまくる“Noise Epic”など、メンバーそれぞれが11年のあいだに蓄積した素養を余すことなく融合させた、幅広い楽曲が揃っている。そう、ヴァーヴというバンドは、常に進化の一過程にあるのだ。そのなかで、リチャードは今回の作品をどのように位置づけているのだろうか?

 「ほかのメンバーがどう思っているのかはわからないけど、俺はいつでも自分らしいと思うことを心の底から表現しているだけさ。俺の曲は、ソウル・ミュージックなんだ。魂を込めるのさ。ニック・マッケイブも同じようにギターを弾いている。サイモン・ジョーンズ(ベース)だって、ピート・サリズバリー(ドラムス)だってそうさ。俺らは音楽の学者ではないし、自分たちのことを最高のミュージシャンだとも思っていない。ただ、俺らにはソウルがあるんだ。それだけだ。ヴァーヴの音楽は、ピュアなソウル・ミュージックなんだ」。

▼ヴァーヴの作品を紹介

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掲載: 2008年09月11日 18:00

更新: 2008年10月06日 18:12

文/bounce.com編集部(構成・文/土田真弓、インタヴュー/EMI ミュージック・ジャパン)

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