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インタビュー

Sarah Brightman

 世界のディーヴァが届けてくれた、初めてのクリスマス・アルバム――愛らしく美しいソプラノ・ヴォイスが描き出すのは、凛とした冬景色、新年を間近に控えた祝祭感、そして、人間の核心を衝くメッセージと私たちの未来……。

  今年1月に発表した5年ぶりのスタジオ新録アルバム『Symphony(邦題:神々のシンフォニー)』に続き、サラ・ブライトマンが初めてのクリスマス・アルバム『A Winter Symphony(邦題:冬のシンフォニー)』をリリースする。アーティストにとって、クリスマス・アルバムはスターの証。昨年の〈世界陸上 2007 大阪〉や今夏の北京オリンピックの開会式でパフォーマンスするなど、いまや名実ともに世界のトップ・スターとなったサラがまだクリスマス・アルバムを発表していなかったとは意外であり、驚きでもある。その待望の作品について、本人に話を訊いてみた。まず、1年に2枚のペースとなるこのタイミングでリリースするに至った理由とは?

 「今回の作品は、実は3~4年前に一度作り始めたプロジェクトなの。当時は私の体調不良から中断せざるを得なくて。でも、クリスマスは昔から大好きだし、1年で最もエモーショナルな時期でしょ? 私も毎年家族で過ごすことを何よりも楽しみにしているの。だから、絶対に完成させなくては、とずっと思っていた。それが今年になったというわけよ」。


  今年もスターのクリスマス・アルバムが何枚もリリースされるが、それらに比べても、サラの作品は収録曲がヴァラエティーに富んでいる。アバのインスト曲に歌詞をつけた“Arrival”から始まり、バッハの“Jesu, Joy Of Man's Desiring(主よ、人の望みの喜びよ)”といった神聖な響きの賛美歌、1973年にUKでヒットした陽気なクリスマス・ソング“I Wish It Could Be Christmas Every Day”、身が引き締まるような冬の心地好い寒さが感じられ、同時に雪景色が浮かぶようなヴィンス・ギルの美しいカヴァー“Colder Than Winter”などで構成されている。選曲のセンスに定評のあるアーティストだが、アメリカで人気のスタンダードを選ぶことなく、なかには70年代にエマーソン・レイク&パーマーが発表した名曲“I Believe In Father Christmas”もあり、オーケストラと合唱団をバックにドラマティックに歌うサラのソプラノ・ヴォイスの愛らしさが際立っている。

 「クリスマス・ソングを選ぶというのは想像以上に大変な作業だった。あまりに候補曲が多いので、十数曲に絞り込むのが難しいのよね。そのなかで私はあらゆるタイプのクリスマス・ソングを歌いたいと思ったの。賛美歌、陽気な歌、スタンダード……。聴く人それぞれに好きなクリスマス・ソングというものがあるでしょ。それに応えたかったのがひとつ。もうひとつは、クリスマスというのはキリストの降誕祭ではあるけれど、新年を迎える前の準備として、その年を振り返り、感謝し、お祝いをする時期でもあると思うの。だから、ホリデイ・シーズンにまつわるすべての要素を盛り込んだ作品にしたいと思ったのよね」。

  前作のタイトルが『Symphony』、そして、新作のタイトルが『A Winter Symphony』。レコーディングでは、ロンドン・シンフォニー・オーケストラとロイヤル・フィルハーモニー・オーケストラ、それぞれと共演をしている。この2作に何らかの関連性があるのだろうか。

 「11月からツアーが始まるので、それを考慮したうえで、『Symphony』と『A Winter Symphony』に一貫したシチュエーションというのを作り出したいと思ったの。ともに直接は関係ないけれど、アンデルセンの童話〈マッチ売りの少女〉の美しくも人間の核心を衝くメッセージがコンセプトの土台となっていて、この物語を入口に私たちの未来というものを描きたいと思ったの。雪景色のジャケットも、ブックレットの写真も、そのコンセプトに基づいて撮影されたものよ」。

  レコーディングも、ジャケットの撮影もスケジュールから考えると、夏に行なわれたはず。ということは、黒いドレスに身を包んだサラに降り注ぐ雪というのはCGなのか。とてもリアルな写真ではあるけれど……。

 「実はロンドンのとある場所に人工降雪機を持ち込んで、人工の雪を降らせながら撮影したのよ。しかも満月の夜で、雰囲気は満点だったけれど、本当に冷たい雪だから、凍えそうだったことをいまでも覚えているわ。ジャケットのアイディアとしては、ロシアの近代絵画で描かれているような雪景色を参考にしているわ」。

 さて、11月にアメリカからスタートするワールド・ツアー。サラのコンサートは、毎回ミュージカルの手法を採り入れた斬新な演出でも楽しませてくれる。今回は、果たしてどんなステージになるのだろうか。

 「これまでになく、テクノロジーを駆使したツアーになる予定よ。イメージとしてはステージ上に動く3Dの世界を再現する感じ。かなり複雑な仕組みなので、ここ9ヶ月間は、その準備に追われているわ。具体的なことを言葉で説明するのは難しいけれど、とにかくこれまでに誰もやったことがない、斬新で、実験的な演出になるのは間違いないわ。日本にもぜひ行きたいと思っているので、楽しみにしていてくださいね」。

▼サラ・ブライトマンの作品を紹介

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・『Harem』SARAH BRIGHTMAN(bounce誌「242号」より転載)

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2008年10月30日 18:00

更新: 2008年10月30日 18:24

文/服部 のり子