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インタビュー

ART-SCHOOL

〈これまで〉を凝縮したベスト盤と、〈これから〉に期待が膨らむミニ・アルバムで彼らが新たな一歩を踏み出す!


 「いままで結構幅広いタイプの楽曲を書いてきたんですけど、わりとひとつのイメージで語られることが多かったと思うんですよ。でも今回はベスト盤も同時に出すし、ちょっと尖ったヴィジュアルを作りたいね、っていう話をしていて。結局、ひとりが人体模型になったんですけど(笑)、みんなが思いっきりクラブに行くような格好をしてるのもおもしろいなと思って、ベタにニューレイヴな感じにしてみました」(木下理樹、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 こうして撮影されたのが、右のアーティスト写真である。「100曲以上世に出してきたなかから、ART-SCH-OOLの初心者が手に取るような選曲にした」というベスト盤『Ghosts & Angels』と同時に発表されたニュー・ミニ・アルバム『ILLMATIC BABY』は、そのヴィジュアル・イメージの如くダンス・ミュージックへ急接近。彼らがニューフェイズに突入したことを如実に語っている。

「4つ打ちとか、いわゆる8ビートじゃないリズムの音楽もいろいろ聴いてきたんですが、なかなか楽曲に反映できなかったんですよね。だけど、今回は自分が家で聴いている音楽が持つ感覚をメンバーと共有したかった。作業的には、いままででいちばんキツかったですね。例えば、〈ニューレイヴ〉ってジャンルではないじゃないですか。技術的には簡単でも、問題は感覚の部分なので、伝えるのが難しくて。かなり試行錯誤しましたね。ブレイクビーツを混ぜてみたり、リズムはいろいろ試していて――最終的にはまとまったので、ホッとしました(笑)」。

 そんな木下の言葉がもっともストレートに転写されているのが、DOPING PANDAのロックスターをプロデューサーに迎えた表題曲だ。極彩色のシンセとメタリックなギターの間からハウスのイーヴン・キックが顔を覗かせるこの楽曲は、聴き手にたぎるような昂揚感を運んでくる。

「前からプロデュースしたいって言われてたんですけど、今回の曲はあいつが聴いてる音楽と雰囲気が合うんじゃないかと思って、完全に音楽的な理由で頼みました。あいつはマメな男ですよ(笑)。こまめにキーボードを入れたりとか、そういう作業を家でネチっこくやるのが好きなんじゃないですかね(笑)」。

 エロスとタナトスが入り混じるダークな心的世界をオルタナ系のサウンドに充填し、爆発させるという独自の音楽性を継承しつつも、フロア志向を一要素として採り入れることによって、みずからを取り巻く画一的なイメージに風穴を空けた感のある本作。そこから吹き込んでくる新鮮な空気は、木下にとって強力な追い風となっているようだ。

「1年半くらい前から音楽雑誌でライターみたいなことをやってるんですけど、新しいバンドの音をどんどん聴くことが刺激になってるのかな? ブラッド・レッド・シューズとかの、グランジなのに肉体的な感覚には影響を受けたかもしれないですね。自分たちのコピー・バンドみたいなのを自分たちでやる、っていうのは絶対にイヤなんで。だからアーティスト側もやっぱり、(新しい音楽に対して)おもしろいと思える気持ちを常に持ってなきゃいけないですよね。今回で言えば、自由で新しくてカッコ良くて、聴いてて興奮が湧き上がってくる感覚を提示したかったし、ちゃんと提示できたんじゃないかなって。この感覚を、次の作品にも活かせればいいなって思います」。

▼ART-SCHOOLの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年10月30日 02:00

更新: 2008年10月30日 17:21

ソース: 『bounce』 304号(2008/10/25)

文/土田 真弓