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インタビュー

HANDSOMEBOY TECHNIQUE 『TERRESTRIAL TONE CLUSTER』 SECOND ROYAL



  さまざまなサンプルを幾重にも積み上げたウォール・オブ・サウンド、オールドスクール・ヒップホップ経由のビートとパーティー・フレイヴァー、胸を鷲掴みにするメロディー――そんなドリーミーな要素ばかりが詰まった森野義貴=HANDSOMEBOY TECHNIQUEのデビュー作『ADELIE LAND』は、国内だけでなく、海外のミュージック・ラヴァーからも熱狂をもって迎えられた。あれから3年余を経て、ついにリリースされたセカンド・アルバム『TERRESTRIAL TONE CLUSTER』は、誇張なしで全世界が待ちうけた一枚だろう。ここには、サンプリングを駆使する従来の手法を継承して編み上げられた、ポップで煌びやかなサウンドが息づいている。だが、その手触りは、これまでとはかなり異なる。

 シンフォニックなアンサンブルが組曲のように展開する冒頭の“NEW SPELL AND DUST”が流れ出した途端、聴き手は前作との明らかな違い/進化に驚かされるはずだ。これまでは、フレーズ単位のサンプルを重ねることで楽曲を作り上げていたのに対し、本作では、より緻密なサンプリング術を展開。細かな音の断片を組み立てることで、自由度の高い音作りを成し得ている。疾走感いっぱいのネオアコ・チューンやフォーキーな歌もの、メランコリックな電化ディスコ、もちろんお得意のソフトロック・マナーなパーティー・チューンなどなど、ビートに縛られないさまざまなフォルムのサウンドが並び、その上を優美なメロディーがダイナミックに踊る。森野のソング・ライティングのセンスがあらゆるかたちで発揮されているという点において、本作には、いわゆるシンガー・ソングライター作品に通じる魅力があるし、自在に音を紡ぐ喜びに溢れているところは、90年代初頭のベッドルーム・テクノを聴いているようでもある。

 また、これだけ多彩なサウンドを揃えながらも、いかにも〈いま〉っぽいサウンドは慎重に避けており、そこからは安直な流行に乗ることに対するアンチな気概も強烈に伺える。だが、そういった自意識を表明することを良しとしない美学のようなものも感じられて、総体としては、匿名的で、ただただ美しくロマンティックなアルバムに仕上がっている。いい音楽、それだけ……みたいな潔さがあると言うか。だからこそ、HANDSOMEBOY TECHNIQUEは、世界に開かれた普遍的な音楽たり得ているのかもしれない。

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2009年02月12日 18:00

更新: 2009年02月12日 20:07

文/澤田 大輔

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