インタビュー

LUNA


  イカツイ+かわいい=〈イカかわいい〉。そんなパンチのあるキャッチコピーを掲げるR&BシンガーのLUNA。USA・フォー・アフリカによる“We Are The World”に衝撃を受け、音楽に目覚めたのが4歳の時。その曲で知ったマイケル・ジャクソンをはじめとする〈音楽の持つ力〉に魅せられていった彼女は、中学生になると「図書館でCDをディグってた」というBガールに成長。そこでヒップホップやR&Bの魅力に触れ、一気にブラック・ミュージックへと傾倒していく。初めて人前で歌ったのは中学の卒業パーティーで、「これはハマるな(笑)」という手応えを感じ、歌い手になることを決意。17歳からヴォイス・トレーニングに通いはじめたという。その間、なかなか自分なりにスキルアップを見い出せない沸々とした日々が続いていたようだが、そんな彼女に転機をもたらしたのは、知り合いから提案されたNYアポロ・シアターでの〈アマチュア・ナイト〉出場の話だった。

「本場を知らなきゃ何も語れないって思ってたし、速攻で決めました。19歳でNYに渡ったんだけど、そこで経験したヴォイトレが素晴らしくて。〈技術は後回し。まずは気持ちで歌いなさい〉って。そこで、やっと〈コレだ!〉って実感できたんです」。

 そうして〈歌う喜び〉を得たLUNAは、耳の肥えた観客の厳しいジャッジで知られる〈アマチュア・ナイト〉において500人の出演者中4位に入賞するという快挙を果たす。

「NYに行って、いろいろ余計な固定観念を捨てられた気がします。あの街の持つパワーはハンパない(笑)。だから、そのパワーを日本に持って帰って、日本で一番を取ってやる!って思って」。

 そう心に誓ってから約10年。その間彼女は、あくまでも自主性のある〈ストリート〉というスタイルにこだわり、誇り高きキャリアを積んできた。今回登場したニュー・アルバムのタイトル――『QUEEN of STREET』はその証である。

「〈ストリート発〉のおもしろさを伝えたいってことと、そのなかで私はクイーンかなってことで(笑)。正直、周りの繋がりとかを見れば、その言葉に負けないくらいやってきたと自負するところはありますね」。

 それを象徴するように、新作にはSEEDAやL-VOKALなど、ストリートの同志たちが参加。ブッ飛んだラップが魅力的だったファースト・アルバム『THA FREAK SHOW』の「ブリンブリンな部分」と、歌にフォーカスしたEP『FOCUS』の「素直でソフトな部分」、その両方を「ガッツリ合わせたかった」とする構成で、前半はヒップホップ/後半はR&Bと明確に線引きされているところが醍醐味だ。「誰もやってないことをやりたくて。だから賭けですね」と本人は言うが、2つの要素がありつつも、意外にも1枚のアルバムとしての統一感は保たれている。その支柱的な要素を担っているのは、他でもないLUNAの声、そしてその〈女性らしさ〉だろう。

「昔は私も男に負けないように気合を入れてたけど、いろいろ学びまして(笑)。リル・キムとかUSの人のラップはセクシーじゃないですか。いまは、歌はもちろん、ラップも女らしくありたいって思ってるから、そう感じてもらえるのは嬉しいですね」。

〈怖がらず私に着いて来て〉と優しく誘うタイトル曲、地元の旧友でもあるレゲエDJの風と飾らない言葉で愛を綴った“Sunshine”など、「みんな怒ってばかりじゃないでしょ(笑)?」という肩の力を抜いたアプローチも魅力的だ。自分の才能を信じられず、渋谷の道端に座るだけしかなかった10代の苦悩を描く“絆-キズナ-”、彼女がいかに人の心の傷みに敏感で、繊細な側面を持っているかが伝わる“Say Goodbye”など、「自分に自信を持てたいまだからこそ、伝えたい」と語る楽曲群も印象深い。「私にとって音楽は常に〈救い〉だった。だから、今度は私が音楽で救い返す」――『QUEEN of STREET』は、LUNAのそんな逞しい愛に満ち溢れている。

PROFILE

LUNA
東京生まれのR&Bシンガー。幼少期から音楽に親しみ、R&Bやヒップホップ、レゲエなどを聴いて育つ。99年に渡米してNYでヴォイス・トレーニングを積み、アポロ・シアターの〈アマチュア・ナイト〉にも出演。帰国後はライヴ中心の活動を開始し、コンピ参加や12インチのリリースを経て、2003年にファースト・アルバム『THA FREAK SHOW』を発表。その後はタワレコ限定のシングル“HAWAII??”や配信でのリリースを続け、2008年のEP『FOCUS』が高い評価を得る。一方ではSEEDAやGEEK、NORIKIYO、SPICY CHOCOLATE、ARIAらの作品に参加して多方面での支持を獲得。このたびニュー・アルバム『QUEEN of STREET』(LIL BOOTY/KSR)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年03月26日 17:00

更新: 2009年03月26日 18:19

ソース: 『bounce』 308号(2009/3/25)

文/岡部 徳枝