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インタビュー

Soulive

〈新世代オルガン・ジャズ・トリオ〉なんて呼び名もいまは昔。10年目を迎えた3人の新たなステージには、さらに心を震わすソウルが漲る!

  「(結成して)もう10年になるなんて、信じられない気分だね。僕たちはラッキーだと思う。僕たちが聴いて育ったいろんなジャンルの音楽を融合して、そこに現代の感覚を採り入れた〈僕たちなりの新しい音楽〉を作ってきたつもりだけど、ここ10年間それが受け入れられて成功しているわけだから」。

 そう語るのは、ソウライヴのギタリストであるエリック・クラズノー(以下同)。アラン(ドラムス)とニール(オルガン)のエヴァンス兄弟と彼が、NYでインスト・トリオを結成したのは99年のことだった。そして、そのファンクとジャズを個性的に掛け合わせた闊達なオルガン主体のサウンドはすぐに評判を取り、これまで不動の3人を核にシーンを闊歩してきた。

 「変わったことといえば、僕たちのサウンド・パレットが増えたことだね。最初はオルガンとギターのアンプだけって感じだったけど、いまはいろんなキーボードやエフェクトも使っているし……。あと、変わったのはニールの髪型だね! 一方、変わっていないのは同じ3人でやっていること。お互いのことは本当にわかっているし、相手が音楽的にどういう方向へ進むかも読めるんだ。そう……確かにそこにはケミストリーがあるよね!」。

 そうした10年の間に、ターニング・ポイントといえることはありますか?という問いには、「1年前に自分たちのレーベルを立ち上げたこと」との返事。ニュー・アルバム『Up Here』はその新レーベル、ロイヤル・ファミリーからのリリースとなる。メンバーの家族的な結び付きが基になった同レーベルは、モータウンやスタックスを規範に置くという。

 「新レーベルの設立が僕たちをスタート地点にまた戻してくれたんだ。正直言って、今回のレコーディングでは何をやろうとか、まったく決めていなかった。ただみんなで集まって、演奏しはじめたんだ。そんな自発的なレコーディングも新鮮なサウンド作りに繋がったと思う。それに、今回はホーン・セクションに重要な役割を持たせたのもおもしろかったね」。

 この発言の通り、今作にはサム・キニンジャーも含むホーン・セクションの音が大いに入れられ、その結果、よりスケールの広がったソウル感やライヴ感を彼らは手にしている。

 「ソウライヴはこれまでも、これはやるけどこれはやらない、というような制限を作ったことはない。例えば“Prototype”ではモダンな曲をオールド・スクールな感覚でやってみた。だって、ほとんどのアーティストは古い曲を持ってきてモダンなアレンジでやろうとするだろう? 僕たちはその反対のことをやってみたかったんだ」。

 実は、前作はポール“トゥーサン”バレットというシンガーを入れた4人組として録音したアルバムだったが、その編成は一枚限りでおしまい。だが、今作にもヴォーカル・ナンバーが3曲収められていて、うち2曲はクラズノーのサイド・プロジェクトであるレタスの新作で歌っていたナイジェル・ホールがヴォーカルを担当している(もう1曲はアランが歌う)。

 「彼はすごい才能の持ち主だよ。JBのようにファンクもできるし、マーヴィン・ゲイのようにバラードも歌える。この7月の日本公演にも連れて行けるのを楽しみにしているよ」。

 最後に、こんなことも訊いてみた。ソウライヴの表現に確固たる公式のようなものがあるとしたら、それはどういうものか?

 「力強い曲を、ハイエナジーで演奏することさ!」。

▼関連盤を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年04月30日 16:00

更新: 2009年04月30日 18:13

ソース: 『bounce』 309号(2009/4/25)

文/佐藤 栄輔