インタビュー

DESIGNED PEOPLE


  またひとつ注目すべきユニットが登場したぞ。邦楽シーンの表舞台で華々しく立ち回っているわけではないものの、その筋では引く手数多のトラックメイカー、SHIN-SKI。スムースかつソウルフルなネタ使いで定評のある彼はまた、ShinSight TrioやLevitatorzなどのユニット活動でも広く知られてきたが、そんなSHIN-SKIが新たにタッグを組んだ相手こそKOJI TANINAKAである。TANINAKAはNujabesのレーベルからアナログを放ったこともある若手トラックメイカー。両名は共に兵庫が地元だという〈サンプリング・オリエンテッド〉なプロデューサー/DJであり、また常日頃から互いのビートを聴かせ合ったりする仲だったというから、このたび歩調を合わせることになったのも自然な流れだと言えよう。その新ユニット=DESIGNED PEOPLEとして活動する目的について、SHIN-SKIは次のように話す。

「自分たちが聴いてきた音楽の素養を、混ぜて煮詰めて表現するのがモットー。このユニットは、〈古き良きもの〉を〈新しき良きもの〉へと進化させる、音楽のルネッサンスみたいなものかな」(SHIN-SKI)。

 相方のTANINAKAもまた、SHIN-SKIと同様のスタンスでこのユニットに臨んでいるようだ。

「ジャンルに縛られず、楽しい音楽を自由に生み出したい、というのが最たる活動テーマです。ジャンルに縛られすぎるのはナンセンスだと思いますね。ポップだろうがコアだろうが良いものは良いから、聴いたあとに〈また聴きたい〉と素直に思われるような感覚を重要視して音楽と向き合いました」(KOJI TANINAKA)。

 彼らが「完全共同作業」(SHIN-SKI)で作り上げたファースト・アルバム『Let's B Free』においても、ふたりが十八番とする音楽性――滑らかな聴き心地のヒップホップ・チューン――をたっぷり味わうことができる。それに、Monday満ちるやエイドリアナ・エヴァンスからブッシュ・ベイビーズの面々まで、ヴァラエティーに富んだゲスト勢の好演も実に晴れやかだ。が、このアルバムでもっとも注目すべきは、ふたりが軽妙なハウス・ナンバーに挑戦していること。いまどきヒップホップとハウスの融合自体には何ら新鮮味がないのも事実だし、そもそも両者を区分けすることに明確な意味を見い出せない昨今でもあるが、ヒップホップ・プロデューサーという印象が強いふたりだけにこの展開は意外と言えば意外だ。

 しかし「17歳の頃からヒップホップもハウスも分け隔てなく聴いてました」とTANINAKAが話す通り、ふたりは至ってフラットな姿勢で音楽制作に取り組んでいるのである。彼らが共有する〈ジャンルの束縛なく、ただグッド・ミュージックを作りたい〉という明快な価値観こそが、DESIGNED PEOPLEの基盤となっているのは疑いようのない事実だろう。

「良いか悪いかの判断はとりあえず置いといて、いまの音楽は商業的な面ばかりが先行してると思うのね。その浅い感じが凄くイヤで。それに比べて、昔の音楽にはそれが商業的なものだったとしても、サウンド的に深くてカッコイイものがいっぱいあったと思う。だからジャンルの垣根を越えて、自分たちがこれまでに影響されてきた音楽を自分たちなりのやり方で再演したかった」(SHIN-SKI)。

 最後に、ふたりの今後の予定について。

「もうじきSHIN-SKI名義のインスト作を出して、あと462って名義でMIDICRONICAのアルバムを全面プロデュースすることになったから、いまはそのビートを作ってます」(SHIN-SKI)。

「制作中のソロ・アルバムを今年のうちに形にしたいです。DESIGNED PEOPLEとしては年内に今作のリミックス盤を出して、あとは2作目のイメージを固めていく感じですね」(TANINAKA)。

PROFILE

DESIGNED PEOPLE
SHIN-SKIとKOJI TANINAKAによるクロスオーヴァーなヒップホップ・ユニット。TANINAKAが神戸で主催するイヴェント〈SOUND CONTROL〉にて出会い、以降も交流を深めていく。その後SHIN-SKIは東京に拠点を移し、複数のプロジェクトを並行して活躍。一方のTANINAKAはDJ FULとのユニット=blue controlなどで活動し、2007年にはソロ名義で7インチ『FREEFORM/TOKI』をリリースする。その後SHIN-SKIが神戸に戻ったことをきっかけに結成され、レコーディングを開始。ジャズ・シンガーの川本睦子をはじめ、エイドリアナ・エヴァンスらをフィーチャーしたファースト・アルバム『Let's B Free』(epicureo/メディアファクトリー)をこのたびリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年04月30日 16:00

更新: 2009年04月30日 18:14

ソース: 『bounce』 309号(2009/4/25)

文/河野 貴仁