インタビュー

TIGARAH

セカイノミナサンコンニチワ!! 鮮やかなジャンプでボーダーを越える才能の登場です!!


   個性はそれぞれですが、旧来のポップスとは異なる文脈を備えたヴィヴィッドな女性アーティストが世界的に増加しています。本誌の〈NEWBLOODS〉特集で紹介してきたライ・ライやデイジー・ティグロナ、イェールらとの同時代性を窺わせるのがこちらの彼女。と思いきや、「みんな大好きです。デイジーは友達だし、イェールちゃんも去年会った時ナイスでした。私にも繋がるところがあるし、クリエイティヴで良いと思います」との答えが。好きなアーティストを訊けば、上記の面々以外にCSSやミスイル、ブラカ・ソム・システマ、サンダーハイスト、テキ・ラテックスらの名が。bounceに気を遣ってくれてるのかと一瞬思いましたよ。ともかく、このTIGARAHのハイパーな存在感には新しい何かを感じてしまうのであります。

 大学時代にデニスDJの“Cerol Na Mao”に衝撃を受けてバイリ・ファンキにハマり、経験もないままPCで曲作りを始め、思いが高じて本場ブラジルに渡ったという彼女。ファンキといえば下品で血の匂いがする最高のベース・ミュージックですが、どんな部分に魅力を感じたのでしょうか?

「いいですね、下品でいやらしくて。そういうの好きですよ(笑)。私はあのチープさにヤラれました。〈え~、マジでこれでいいの?〉みたいな(笑)。スカスカのトラックに勢いだけみたいなラップがダサ格好良いんですよ。あとは現地のエナジー。リオのクラブで体験した時は、〈あ~、私いま物凄いところにいる!〉って感じで」。

 で、そのリオで出会ったMr Dの導きでLAに移り、そこで楽曲が認められ……といったプロセスを経て登場したのが、今回のミニ・アルバム『TIGARAH!』です。本人が「ファンキをベースとしつつ、そのいろんな発展型に挑戦してみました。バイレクトロ(バイリ・ファンキ+エレクトロ)をさらに進化させてもいいかなって。リリックは〈とりあえず言いたいこと言わせて〉って感じです(笑)」と話すように、オフェンシヴな折衷ゲットー・ベースとユニークなラップががっぷり組み合ったエグい逸曲たちに、ダズ・イット・オフェンド・ユー・ヤー?のモーガン(脱退の報が届いたばかり!)によるリミックスも加えた全6曲。この後にはフル・アルバムも控えているそうで、前菜としては十分濃厚でしょう。「もっとクリエイティヴでいいのに、古い考え方で閉ざされてるような日本の音楽業界に一発衝撃を与えたかった」とも語る彼女は、間違いなくまだまだデカくなりますよ。

▼関連盤を紹介。


デニスDJ“Cerol Na Mao”を収めたコンピ『Rio Baile Funk』(Essay)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年04月30日 16:00

更新: 2009年04月30日 18:12

ソース: 『bounce』 309号(2009/4/25)

文/出嶌 孝次