MADINA LAKE
スマッシング・パンプキンズやウィルコ、トータスにフォール・アウト・ボーイなどなど、シカゴ産のロック・バンドにはカラフルで深みのあるアクトが多い。そして、日本先行でセカンド・アルバム『Attics To Eden』をリリースしたマディーナ・レイクも、先達の例に漏れず多様性を持ち、スマパン顔負けの歪んだギターやナイン・インチ・ネイルズ流儀のインダストリアルなアレンジ、ミューズっぽいスケール感を装備。ジャンルもパンクやメタルにハード・ロック、80'sポップやテクノ、ヒップホップなどを貪欲に吸収している。しかし、その真ん中にキャッチーなメロディーを必ず置くことで、誰もが楽しめるサウンドを作り上げているのだ。
「普遍的なアルバムを作りたくて、『Attics To Eden』でそれは達成できたと自負しているし、ジャンルレスなアルバムになったとも思う。前作はある特定ジャンルのレッテルを貼られたから、それに対する反動もあったんだろうね。でも変わってない部分もあるよ。ストーリー性のある歌詞を書いて人の心を動かすことができるのは、僕たちならではの一貫した魅力だと思うし」(マシュー・レオン)。
「僕らは曲作りにおいて2つのルールを設けているんだ。まず1つは、〈世の中で起こっていることを無視する〉ってこと。トレンドやシーン、ラジオで流れているものすべてをシャットアウトして、自分たちのなかにある本当の音を吐き出すんだ。そしてもう1つは、〈誠実である〉ってこと。歌詞は実体験を元に僕が書き、それをマシューがどんどん肉付けして架空の世界へと広げていくんだよ。この第2章は〈燃え尽きた地球〉をテーマにしていて、第3章へと繋がっているんだ」(ネイサン・レオン)。
そう、本作はファースト・アルバム『From Them, Through Us, To You』から続く3部作の第2章にあたる。
「アデリアという主人公が架空の世界で生きていて……そもそもなぜ僕が架空の世界を作ったのかというと、バンドの社会観、宗教観、政治観を表現するためだったんだ」(マシュー)。
「地球が持っているエネルギーや力を表現したいんだ。人類がしてきた酷いことに対しての地球からの復讐という形でね」(ネイサン)。
そんな壮大なストーリーが、音楽だけで完結しないのも人気の秘密。アートワークやライヴ会場にストーリーを紐解くヒントをこっそり置き、ファンがネット上で情報や意見を交換しながら物語の展開を楽しめるようなプロセスが用意されている。パッケージを購入して音楽を楽しむリスナーの数が減少傾向にあるいま、彼らの試みはある部分で時代に逆行しているのかもしれない。だが、このバンドを通じてCDの価値を改めて考えさせられたのは事実だし、またファン参加型の手法は、ネットの普及によりコミュニケーションが密になってきたリスナー同士の絆をより強固なものとする新たな手段として注目すべきだろう。
余談だが、2005年に結成したばかりの若手とはいえ、双子のネイサンとマシューはブランク・セオリーという、ダニエル・トレリとマテオ・カマルゴはリフォーマという前身バンドでキャリアを積んでいる。そしてマディーナ・レイク結成後、バンドの運営資金調達のためにレオン兄弟はTV番組の企画に参加。牛や豚の内臓や血を飲むなどして生死の境を彷徨った末、優勝賞金5万ドルを獲得している。そんな相当の気合を詰め込んで楽曲制作に臨んでいたからこそ、〈エモ〉というレッテルを勝手に貼られてしまったことに違和感を覚えたのも無理はない。今回、レッド・ジャンプスーツ・アパラタスやパラモアなどの〈脱エモ化〉に一役買ったデヴィッド・ベンデスにプロデュースを委ねた点からも、バンドの思いを感じ取ることはできるだろう。その結果、またしてもシカゴから比類なき個性を確立したバンドが生まれたのである。渾身の一枚『Attics To Eden』を手に、間もなく彼らが世界中を震撼させるぞ。
PROFILE
マディーナ・レイク
ネイサン・レオン(ヴォーカル)、マシュー・レオン(ベース)、マテオ・カマルゴ(ギター)、ダニエル・トレリ(ドラムス)から成る4人組。2005年初頭にシカゴで結成。同年5月、活動資金獲得のために参加したTV番組〈Fear Factor〉の双子大会でレオン兄弟が優勝を果たす。そのTV出演をきっかけに注目を浴び、2006年にファーストEP『The Disappearance Of Adalia』をリリース。ほどなくしてロードランナーと契約を結ぶ。2007年3月にファースト・アルバム『From Them, Through Us, To You』を発表。精力的なライヴ活動を通じてファン層を拡げていく。このたびセカンド・アルバム『Attics To Eden』(Roadrunner/ROADRUNNER JAPAN)を日本先行でリリースしたばかり。